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今週の本棚

堀江敏幸・評 『帰る家もなく』=与那原恵・著

 (ボーダーインク・1944円)

出会いのなかに帰る家が

 しんみりしたあとは、ほがらかに。明るく振る舞ったあとは少し真面目に。まっすぐいきすぎたあとは、ユーモアと笑いをまじえて、頁(ページ)をやわらかく整える。最後にやってくるのは、なんとも言えない幸福感だ。

 著者の両親はともに沖縄の出身である。父親は首里の旧家に、母親は医者の家に生まれ育った。医師である母方の祖父は台北で病院を経営しており、大正期から終戦直後まで台湾にいた。その妻、つまり祖母は女優として、一時、松井須磨子とおなじ舞台に立っていたこともある。彼らの物語は、琉球、台湾の歴史を重ね合わせた旧著『美麗島まで』に詳しいけれど、本書にはその後に展開された個人史と、当時はつかみ切れていなかった感情が、少しずつ角度をずらしながらとらえられている。

 昭和十年代の半ば、放送関係の仕事を得て先に東京に出ていた母親は、役人だった四つ年上の恋人の心を動か…

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