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炎のなかへ

/132 アンディ・タケシの東京大空襲 石田衣良 望月ミネタロウ・画

三月九日(36)

 横断歩道を渡って、江東楽天地の門をくぐった。両脇の映画館にかかっているのは、戦意高揚のために日本で制作された戦争映画だった。平日ということもあり、あまり人出は多くなかった。和服と洋装は半々だろうか。なにをしているのかわからないけれど、ひどくきれいにめかしこんだ若い女性と目つきの鋭い中年男が目についた。

 渓谷というのはぴったりの言葉だと、タケシは思った。弓型の門をくぐった先は数百メートルも両側に映画館がびっしりと続いている。ここは映画の渓谷なのだ。たくさんの映画館の間にはその何倍もの飲食店や酒場がすき間を埋め、ひと坪の土地も無駄にしまいと軒を競っている。映画の谷の奥まで、色とりどりののぼりが強い北風になびいていた。染め抜かれているのは月に何度も変わる映画の題名でなく、映画館と制作会社とスター俳優…

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