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桜とヘルダーリン

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東京・上野公園で=梅津時比古撮影
東京・上野公園で=梅津時比古撮影

 先月末、夕暮れの上野公園を歩いた。桜の盛り。無数の人が桜並木の方へ向かって吸い込まれてゆく。私もその一人。男も女も、さまざまな国の人も、子ども、お年寄り、多くの笑顔、時には思い詰めたような顔も、皆一様に、歩いてゆく。

 桜の通りに出ると、白い花びらの連なるマスがうねり、間に霞(かすみ)がたなびく。人の頭、顔の上に次々と伸ばされた手からフラッシュが光る。花と人の渦に立ち尽くす。

 夕暮れの墨が水に流れるように一帯を浸し始める。木の下の宴(うたげ)がにぎやかになる。猥雑(わいざつ)な言葉、アルコールの泡、残飯のにおいが鼻を突くと桜は沈黙の度を増してくる。

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