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社説

北朝鮮情勢と首相訪米 密に認識のすり合わせを

 北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐる外交が慌ただしさを増している。

     3月末の中国と北朝鮮の首脳会談に続き、今月に入ってロシアと北朝鮮、日本と韓国、日本と中国の外相がそれぞれ会談した。

     そして安倍晋三首相はあすから米国を訪問し、トランプ米大統領と2日間にわたって会談する。

     今月27日の南北首脳会談と、5月末か6月初めの米朝首脳会談を前にした一連の首脳・閣僚外交の中でも大きな位置を占める会談となろう。

     史上初の米朝首脳会談にどう臨むか。今回の安倍・トランプ会談は日米が対処方針を調整し、交渉力を高めるうえで従来にも増して重要だ。

    日米の地政学的な差異

     「日米は100%共にある」。北朝鮮情勢をめぐる認識と対処方針について首相はこう訴えてきた。

     核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮に「最大限の圧力」をかけ「対話のための対話はしない」というスタンスは確かに一定の効果があったのだろう。

     ただし、日米は、すべての利害が一致しているわけではない。両国が置かれた地政学的な違いがあるからだ。それによって脅威への受け止めも異なる。

     米朝首脳会談開催の報は日本にとって唐突だった。トランプ氏が描く展望も明確ではない。

     北朝鮮が「非核化」の意思を表明し、解決策を探る対話の局面に入るいま、改めて綿密に認識をすり合わせ、溝を埋める努力が必要だろう。

     まず、ミサイルだ。

     北朝鮮は昨年、米本土に到達可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射に固執した。

     米国内でも不安は高まり、北朝鮮批判が強まった。トランプ氏が米朝会談でICBM開発阻止を優先させようとしても不思議ではない。

     しかし、日本にとっての脅威は北朝鮮が大量に配備する中距離弾道ミサイルだ。ICBM開発阻止で成果があっても中距離ミサイルが放置されれば日米の離間を招き、同盟関係が動揺しかねない。

     日本には在日米軍が展開している。首相は中距離ミサイルも米国にとっての脅威だとトランプ氏に強調し、理解を求めることが大事だ。

     次に「非核化」の内容だ。

     北朝鮮は核凍結や放棄を約束した1994年の米朝枠組み合意や2005年の6カ国協議共同声明後も核開発を進め、核廃棄できなかった。

     日米は「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄」を基本にしてきた。具体的には国際原子力機関(IAEA)による査察、核物質の廃棄、関連施設の解体などが含まれる。

     北朝鮮は非核化について「段階的で同時並行的な措置」を表明している。核放棄に一歩進むごとに制裁解除など見返りを求める「行動対行動」と呼ばれるプロセスだ。

     だが、このやり方では、過去の時間稼ぎと同じではないかという疑念は消えない。さらに当時と異なり北朝鮮はすでに核保有を宣言し、大量のミサイルを配備している。

     制裁強化の効果を考えれば、日米は核放棄後の制裁解除を原則とする姿勢を固め直すべきだろう。

    中韓露との連携強化も

     日本には拉致問題という固有の案件もある。北朝鮮が拉致被害者の再調査を約束した14年のストックホルム合意後、何ら進展していない。首相は改めて緊急性を訴えるべきだ。

     トランプ氏には拉致問題への関心があり、米朝会談で提起する可能性は高い。しかし、米国が批判を強める対日貿易赤字に絡めてこの問題を取り上げるなら注意が必要だ。

     森友・加計問題で政権運営に苦しむ安倍首相も貿易問題で譲歩し拉致問題を成果とするような「取引」に応じることがあってはならない。

     米朝会談が進展すれば、核放棄のプロセスや将来的な北東アジアの安全保障について日本も関与していかなければならない。

     北朝鮮が6カ国協議に復帰する意向だという報道もある。そうなれば、米国だけでなく中韓露との連携も重要になる。日本が独自に中韓両国との関係を立て直す努力も必要だ。

     国際社会の結束も欠かせない。北朝鮮が軟化したのは、米中がともに圧力をかけ、これに国際社会が同調したことが大きい。隊列を崩せば北朝鮮を利するだけだ。

     日本単独で北朝鮮情勢を動かせるわけではない。それは米国や中国など他の国々も同じだ。だからこそ、外交的な結束が重要になる。

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