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Dr.北村が語る現代思春期

入所者目線の施設改善を シェルターから「脱獄」した訳

 「ヘアアイロンだけは持って逃げたかった」。真顔でこう訴えるのはハルちゃん(21歳)。子どもの時、両親からのネグレクトや暴力に耐えきれず家出。ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で知り合った男と生活を始めるや束縛と暴力。ハルちゃんは、あらゆる情報をかき集めて、ついに一時保護所であるシェルターにたどり着いたといいます。

     しかし、その生活が予想を遥(はる)かに超えた環境で、助けを求めてから11日目にして「脱獄」。「脱獄」とは僕の言葉ではありません。「私は刑務所での生活の経験はありませんが」と前置きして、ハルちゃんが語ってくれた言葉なのです。

     厚生労働省によると、2016年度に婦人相談所における一時保護の対象となったのは8642件。その内訳は、同伴する家族4018件、夫等の暴力を理由とする者3214件、夫等の暴力を理由とする者以外1410件。ハルちゃんの場合は事実婚として、夫等の暴力の範ちゅうに入るはずです。全国のシェルターが、ハルちゃんの入所した施設と同様なのかはっきりしませんが、年間に9000人弱が利用することを考えると看過できません。

     ハルちゃんの言葉を続けましょう。「朝7時に放送が入って起床。7時20分に掃除が終わる。8時から9時半の間に朝ご飯。食堂の席にも名前のテープが貼ってあって、話しちゃいけない雰囲気。おばさん、おばあさんが多くて老人ホームみたいな感じ」と、せきを切ったように話します。シェルターは、歴史的に売春経歴、あるいはその恐れのある者を一時保護する施設であったことから、社会復帰を促すには、厳格な規律を順守させることが重要だという名残があるのでしょう。でも、ハルちゃんは、両親や同居した男からの暴力に耐えきれず入所を求めた21歳の女の子なのです。被害者であって決して犯罪者ではありません。

     「一番嫌だったのは?」と聞くと、「シェルターだから、外部との連絡がとれないように携帯を預けるのは分かる。でも、おばあさんが着るようなだぶだぶの服を着せられ、毎日ラジオ体操第1と第2をさせられた。時間の過ごし方がわからないと言った時に渡されたのは、童話や塗り絵、百人一首の解説書」と不満タラタラのハルちゃん。一時保護とはいえ、入所者側に立った施設改善が求められていると強く感じました。

     5日に高木美智代副厚労相にお会いし、「時代に即応した施設が必要ですね」と言葉をかけられ、救われた気持ちになったことは言うまでもありません。(日本家族計画協会クリニック所長、北村邦夫)

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