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東京へ ともに歩む

毎日新聞
アスリート交差点2020

再現力 0.01秒で違う世界 感動与える走りを=陸上・山県亮太

渡辺一平

 アスリートの価値は感動を与えられるかどうかだと考えています。陸上男子100メートルは、順位だけではなく記録でも喜んでもらえます。100メートルという切りのいい距離で、10秒を切れるかどうかで価値が変わる。分かりやすいから記録も注目してもらえます。

 記録は短距離選手にとって「値札」のようなもの。自己記録の遅い選手が勝つことは基本的にありません。記録を追えば、順位も後からついてきます。記録は成長の指標になりますが、風に左右される側面もあります。本当の成長度合いを計るため、1メートルの風が吹くと0秒06記録が変わるという基準で無風換算し、前の記録と比較するようにしています。

 記録を強く意識したのは小学5年生の時です。小学4年で陸上を始め、最初は記録が一気に伸びましたが、13秒台に入る手前で足踏みしました。父と腹筋や背筋など自主トレーニングをすると、次の大会で13秒6をマークし、全国大会にも出場しました。

 今、自己記録は10秒00。9秒99とは世界が違います。五輪などで決勝の8人に残れるかどうかのラインは9秒台になることが多い。9秒台の記録を持つ選手は力を100%発揮すれば、決勝に残る可能性があり、9秒台が世界へのスタートラインです。

 昨年9月に桐生祥秀選手が日本選手初の9秒台となる9秒98を出しました。自分ももう25歳。そろそろ9秒台を出さないといけない。誰が最初に9秒台を出すか争っていた頃とは違う形のプレッシャーを感じています。最近は目標で「9秒8台」と公言しています。9秒98という日本記録をインパクトのある数字で塗り替えたい。根拠はあります。昨年9月に出した10秒00は追い風0・2メートルとほぼ無風。公認される追い風2・0メートルならば9秒8台の可能性があります。東京五輪までに狙って9秒8台を出せる選手になれば、表彰台も見えてきます。

 コラムのテーマは「再現力」。良い動きをいつでも「再現」できることが強い選手の条件。それができれば東京五輪でも好記録が出せると、練習に取り組んでいます。

  ◇

 東京五輪を目指す選手のリレーコラム「アスリート交差点2020」が始まりました。筆者は、陸上の山県亮太▽競泳の渡辺一平▽バドミントンの奥原希望▽卓球の伊藤美誠▽カヌーの羽根田卓也▽ソフトボールの上野由岐子▽柔道の松本薫--の7選手。競技へのこだわり、近況などを率直な言葉で伝えます。選手や読者からの質問に答えるコーナーも新設。双方向のやり取りもご期待ください。=あすは渡辺一平です(タイトルは自筆)


 Q 勝負強さの秘密は

 山県選手の「勝負強さ」の要因を教えてください。また、記録が出やすいのは練習のときですか、試合の大一番ですか。カヌー・羽根田卓也からの質問

 A 記録は試合の方が出ます。練習でどれだけ集中しても試合の緊張感は出せません。一方、どんなに自信のある練習ができていても、試合はとても緊張します。高い緊張感を持ちつつ、同時にリラックスできたとき、記録が出ます。レース直前には「失敗してもいい」と開き直ります。絶対に勝てる勝負はないから、最後の最後に「これ以上、することはない。これで負けても仕方ない」と思います。周囲に先行されても「自分のレースをする」と落ち着いて走れます。


 ■人物略歴

山県亮太(やまがた・りょうた)

 広島市出身。2016年リオデジャネイロ五輪で400メートルリレー銀メダル、100メートル準決勝進出。昨年9月に100メートル日本歴代2位タイの10秒00を出した。セイコーホールディングス所属。25歳。