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米ニクソン政権のキッシンジャー大統領補佐官の訪中は政府内でも極秘だった。その予定時期にレアード国防長官の台湾訪問が持ち上がり、キッシンジャー氏が理由も言わずに頭を下げ中止させる一幕もあった▲実はレアード氏は軍からの情報でキッシンジャー氏と中国の通信を知り、いやがらせに訪台計画を持ち出したのだ。国務長官も国務省も知らぬ間のトップ外交の秘密主義には中国側も驚いた(アイザックソン著「キッシンジャー」)▲その後のニクソン訪中のようにトップ外交が従来の枠組みを一変させる外交的新局面を生むこともある。だが素人外交が同盟関係にひびを入れたり、持続可能な合意作りに失敗したりすることがあるのも外交史の見逃せぬ教訓である▲米朝会談を前にトランプ政権のポンペオCIA長官が極秘裏に訪朝し、金正恩(キムジョンウン)委員長と会談したとの米紙報道である。こちらも側近を介したトップ会談のお膳立てで、日米首脳会談では「極めて高いレベルの接触」として言及された▲心配は、ポンペオ氏が米朝会談では米国への核の脅威除去を優先するという考えを示していることだ。では日韓への核脅威は米朝事前接触でどう論じられたのか。ニクソン訪中で同盟国の日本がかやの外に置かれた悪夢もよみがえる▲先のレアード氏は日本軽視を見るに見かね、発表間際の正式通告よりも何時間か前に日本政府内の知人にニクソン訪中を伝えたという。今またトップ外交のリスクと向き合うことになった同盟国・日本だ。
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