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今週の本棚

『ペインレス 上・下』 著者・天童荒太さん

インタビューに答える作家の天童荒太さん

 ◆天童荒太(てんどう・あらた)さん

 (新潮社・各1620円)

 『永遠の仔(こ)』(1999年)『悼む人』(2008年)などで生きがたい人々や死をめぐる心の痛みをみつめてきた作家が、今回挑んだのは「無痛」である。痛みを知らない人を通して、人間存在や世界の成り立ちに斬り込んだ。

 心に痛みを感じない、他人に共感を持てない医師野宮万浬(まり)と、テロに巻き込まれ体の痛みを感じなくなった貴井森悟。二人が出会い、性愛の中で痛みのある世界と無痛の世界がせめぎ合う。経験した痛みの再現を望む老人の過去も絡み、濃厚な匂いが立ちこめる。「性愛の極致は死に近付くといわれる。エロス(生)とタナトス(死)のように痛みとエロスは裏返し的なものだと思う。性的快楽の根底には痛みがあるのではないか。ここを深めると、エロチックな小説が生まれる直感があった」

 本作のポイントは、世界は「痛み」で成り立っていると読み解く点だ。「コミュニケーションも、心あるいは体の痛みをコンセンサスとして持っているから成立する。世界の成り立ちも文明の発達も痛みによって説明しうると、二人を追いかけるうちに発見していった」。この世界には愛がある。愛する者を失うおびえから戦争も暴力の連鎖も続いていくわけだ。そこに、痛みを感じない人間を登場させた。もくろんだのは「感情で世界が揺れ…

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