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武田 砂鉄・評『出会い系サイトで70人と実際に会って……』花田菜々子・著

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本が持つ生命力をアクロバティックに興す

◆『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』花田菜々子・著((河出書房新社/税別1300円)

 この本がどのような本なのかについては、長い長いタイトルが説明し尽くしているが、「出会い系サイト」という響きから身勝手に思い浮かべる、少々卑猥(ひわい)な光景は広がらない。自分の偏見を剥がしながら読み進めることになるが、剥がした後に平穏な世界が残るのかといえば、そんなはずがない。著者が投げかけてくるのは、(本人にその気はないだろうが)勇気と感動だったりする。いつの間にか、物語に吸い込まれる。どうして、勇気をもらって感動しているんだろう自分、と我に返る。

 結婚生活が破綻しかかり家出、宿無し生活に突入した書店員が、怪しげな出会い系サイト「X」に登録、出会う人々に本をすすめていく。あわよくばセックスに持ち込みたがる男。聞いてもいないのに年収5000万だと漏らす喫茶店割り勘男。「そんな本は、とっくにもう全部知っています」とひとまず上に立つ男。眼前の男を広い心で迎え撃つ。いや、迎えるけど、撃たない。なぜなら、「ここにいる人は、みんな『どこかへ行く途中』の…

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