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ぷらすアルファ

社外セクハラ対処法は 相手に伝わるように「NO」

社外でセクハラ被害が起きた時には

ぷらすアルファ(α)

 セクハラ疑惑で辞任した財務省の福田淳一前事務次官の耳を疑うような発言の数々に、「私も経験がある」と思った人は、業界を問わず少なくないはずだ。社外からのセクハラは、取引先の方が力があるなど二重の上下関係にもなりかねない。拒絶の仕方も難しく、社内にも相談しにくいのが実情だ。どう対処すればいいのか。

     「この後どうする? ホテルに行こうよ」。東京都内で働く30代の営業職女性は、取引先の男性から何度も誘われている。体に触られたり下ネタを強要されたりすることもしょっちゅうだ。機嫌を悪くさせると契約を切られるかもしれない--。強く拒むこともできず、笑ってごまかした。自分の能力や態度を疑われないかと不安で、上司にも打ち明けられず、社内にあるセクハラ相談窓口にも頼れない。いざという時に被害を訴え出られるような環境づくりのためには、単に相談窓口を設置するだけでなく、組織的な対策が必要だ。

     ●マニュアル配布

     「ありがとうございます。でもそれが私の仕事ですので、お気持ちだけいただいておきます」。営業職の9割以上が女性という生命保険大手の第一生命保険は、顧客から食事の誘いを受けた時の断り方などを具体的に示したマニュアルを社員に配布している。自宅訪問は家族が在宅中に行う▽休日や夜遅くの連絡や絵文字の使用は避ける▽自分の個人情報を安易に話さない--といった行動指針も明記した。相手の気持ちを尊重するよう説く一方で、「相手が上司、お客様であっても、それは不快な行動だと相手にはっきり伝える」と記す。

     アクサ生命保険も、社員向けのガイドラインで「被害を受けたと感じたら、ちゅうちょせず、所管長や窓口に申し出てください」と呼びかける。相談を受ける上司にも「取引先だからと放っておくと、大きな問題に発展する」と警告。訪問時に管理職を同行させる▽訪問時間帯に配慮する▽取引先へ理解を求める--との対応を促す。研修では、世界的な「#MeToo」ムーブメントといった社会意識の変化も伝え、社内でのセクハラ予防にも力を入れる。

     両社とも、匿名相談が可能な窓口を設置しているのも特徴だ。アクサ生命の中村洋子・コンプライアンス推進グループマネジャーは「対応の基本は『本人保護ファースト』。名前を明かすかどうかも含め、まずは本人に詳しい事情やどんな対処を求めているのかを聞く」と話す。最初から実名で相談する人もおり、情報が漏れないよう数人の担当者のみで事実関係を調査する。

     ●組織で対応が基本

     セクハラ被害に遭った社員、被害を報告された会社は、それぞれどう対応すればいいのか。社外からのセクハラを予防するため、企業向け研修をしているコンサルティング会社「クオレ・シー・キューブ」(東京都新宿区)に聞いた。

     クオレ社が研修で最初に受講者に伝えるのは「断ってもいい」ということだ。相手に伝わりやすい否定の表現法や、誤解させない態度と服装、「お断りフレーズ」と、具体的な防衛策も伝授する。執行役員の稲尾和泉さんは「『仕事だから』と自分自身の人権まで削る必要はない。理不尽なハラスメントを拒否する権利は誰もが持っている」と強調する。

     クオレ社が企業向け研修を始めたのは、十数年前に受けた相談がきっかけ。ある製薬会社で、営業職の女性社員が医師から体を触られるなどのセクハラを日常的に受けていた。セクハラは加害する側に問題があり、被害者に防止策を強いるのは不適切だとの見方もあるが、「自己防衛は女性を守り、ビジネス関係を保つためです」と稲尾さん。加害者に「嫌がっていると思わなかった」と言い訳をさせないことも重要だ。起きてしまった後では、被害者に取り返しのつかない傷が残る。

     被害報告を受けた会社側は「たいしたことではない」と被害を軽く扱ったり、被害者の態度を責めたりしてはいけない。被害者を再び傷つける2次ハラスメントに当たる。上司一人で判断せず、組織で対応するのも基本だ。

     会社として1対1での会合を禁じたり、セクハラ防止規定を書いたカードを持たせたりするのも、予防策として効果的だ。取引先との雑談の中で「うちも最近セクハラに厳しくて……」とカードを見せれば、抑制効果が期待できるという。【稲田佳代、塩田彩、中村かさね】

     ●調査は「第三者」で

     社員がセクハラ加害で告発された場合、相手の会社に第三者による調査委員会の設立を申し入れる。女性問題を手がける太田啓子弁護士は「弁護士のガイドラインには、第三者委員会には両者に利害関係がある人は入ってはいけない、とある。中立性を担保することが適正な調査につながる」と指摘する。調査前にセクハラを否定したり「名誉毀損(きそん)で訴える」と敵対的な態度を取ったりすることは、会社として被害者を攻撃することになる。稲尾さんは、調査は今後もビジネス関係を維持し、両者にとって快適な労働環境を取り戻すために重要だとしている。

     万が一、セクハラ被害を報告しても社内で解決できなければ、弁護士や労働基準監督署を頼ろう。労働問題に詳しい早田由布子弁護士は「口頭によるセクハラの場合、証拠がある部分しか事実認定されないことが多い。録音して証拠を残してください」とアドバイスする。


    社外でのセクハラを防ぐには

    「NO!」を伝える時は、相手に伝わるように表現

     (1)相手の顔をしっかり真顔で見る

     (2)言葉を濁さず、語尾まではっきりと伝える

     (3)モジモジしない、毅然(きぜん)とした態度で伝える

    <使える「お断りフレーズ」>

     ◆個人的に食事に誘われたら

      →「ぜひ上司も同席させてください」

       「大事なお得意様に変なうわさが広がっては大変です」

     ◆商談や接待で髪や体に触られたら

      →「信頼していますから、やめてください」

       「体に触るのはセクハラです。会社に報告します」

    ※クオレ社「得意先からのセクシュアル・ハラスメント防止ガイドブック」より抜粋

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