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社説

11年ぶりの南北首脳会談 非核化への流れ、止めるな

 最大の課題だった北朝鮮の核・ミサイル問題よりも、南北の融和を優先させた印象は否めない。それでも、ようやく芽生えた非核化の流れを決して止めてはならない。

     韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が南北軍事境界線のある板門店で会談し、共同宣言を発表した。

     今回の会談は、6月までに行われる米朝首脳会談を前にした「橋渡し」との位置付けだった。金委員長には、北朝鮮の外交や軍の責任者が随行していた。核問題で思い切った決断がなされるとの期待感があった。

     しかし、発表された「板門店宣言」では「完全な非核化により、核のない朝鮮半島を実現するとの共通の目標を確認した」との表現にとどまった。会談後の共同発表で、金委員長は「我々の民族の新しい未来」などと南北関係改善を強調するだけで、核問題に触れなかった。

    演出された融和ムード

     「朝鮮半島の非核化」は、米国による韓国への核の傘を問題視する北朝鮮に配慮した表現だ。韓国政府は「米朝の立場をすべて考慮した現実的な方法を議論する」と説明する。議論の行方次第では在韓米軍の縮小や撤退に道を開きかねない。

     米朝首脳会談を前に原則的合意にとどめたのかもしれないが、北朝鮮の具体的な行動が盛り込まれなかったのは残念だ。

     一方宣言では、朝鮮戦争の終戦宣言を年内に行うと明記された。中でも平和協定への転換に向け「南北と米の3者ないし南北米中の4者会談の開催を積極的に推進する」との合意は目を引く。

     これまでも2007年の南北首脳会談後の共同宣言で「直接関連する3者ないし4者の首脳が朝鮮半島地域で終戦を宣言する」と盛り込まれたことがある。朝鮮戦争の休戦協定は米国を中心とする国連軍と、北朝鮮軍及び中国軍が署名した。韓国は休戦協定に反対して署名しなかったが、現場は朝鮮半島だった。

     休戦状態が完全な終戦に向かえば、日本をはじめとする北東アジアの安定化に大きく寄与する。年内と区切ったのは、北朝鮮の非核化を同時に進める狙いがあるのだろう。

     そうであればこそ、日本やロシアも加わる枠組みが必要だ。北朝鮮の核問題は、朝鮮戦争終結のレベルにとどまらず、この地域の安全保障環境に重大な影響を与えている。韓国政府は、地域の平和構築に向けた協議の重要性を改めて検討すべきだ。

     きのうの会談では終始、南北融和ムードが演出された。金委員長は徒歩で軍事境界線を越え、北朝鮮の最高指導者として初めて韓国側に足を踏み入れた。板門店宣言署名後、両首脳は抱き合った。

     金委員長は核開発の当事者であるにもかかわらず、文大統領が金委員長の「勇気と決断」を盛んに持ち上げたのは奇異でもあった。

    合意の肉付けが必要だ

     今回の会談について、トランプ米大統領は「良いことが起きている」と歓迎した。北朝鮮は米朝首脳会談での成功を目指し、当面融和姿勢を取り続けるだろう。また文大統領には、朝鮮半島を再び危機に陥れないとの強い思いがある。

     南北は合意と破棄の歴史を繰り返してきた。1972年には平和的な統一で合意した南北共同声明を発表した。92年には南北非核化共同宣言を発効したが、いずれも完全な履行には至らなかった。

     このため、文政権は今回、米国との連携に力点を置いた。日本や中国など周辺国との協調姿勢も示している。着実な合意履行のため、韓国政府は今後も国際社会との連携を重視すべきだ。合意が着実に履行されれば、米朝首脳会談での北朝鮮の非核化議論を後押しするだろう。

     北朝鮮は核保有国としての立場に変化はなく、米国と軍縮交渉に臨むに過ぎないとの否定的な見方と、場合によっては核放棄を含めた大胆な決断もありうるとの観測が交錯している。

     とはいえ、北朝鮮核問題解決に向けた好機との見方は関係国の一致するところだ。合意履行が不十分な状況での行き過ぎた融和政策は禁物だが、信頼関係構築に向けて努力すべき時でもある。

     安倍晋三首相は「北朝鮮をめぐる諸懸案の包括的な解決に向けた前向きな動き」と評価してみせたが、内容の論評は避けた。北東アジアの平和と安定のために日本が果たすべき役割を改めて検討すべきだ。

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