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佐藤優・評 『バルト自伝』=カール・バルト著

 (新教出版社・新教新書1296円)

「何事もなかったかのごとく」

 20世紀のキリスト教神学に最も影響を与えた人物は、スイスのプロテスタント神学者カール・バルト(1886~1968年)であるということについて異論を唱える人はいないであろう。今年はバルト没後50年になるので、本書が復刊された。本書はバルトが米誌『クリスチャン・センチュリー』に寄稿した三つの手記により構成されている。1939年に同誌は「過去10年で私の心はいかに変化したか」という特集を組み、キリスト教会の著名人たちの手記を掲載した。この企画は49年、59年にも行われ、バルトの手記が3度掲載された。それによって、28~58年、バルトが42~72歳の思想的展開を知ることができる。

 バルトの最大の業績は、第一次世界大戦による大量殺戮(さつりく)と大量破壊を真摯(しんし)に受け止めて、神理解を根本的に転換したことだ。人間が神について語る宗教を止(や)め、神が人間について語ることに虚心坦懐(たんかい)に耳を傾けることを説いた。さらに重要なのは、その聞いた神の言葉を他者に語ることである。人間は神ではない。従って、人間が神について語ることは不可能である。しかし、神について語らなくて…

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