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沼野充義・評 『ニュルンベルク合流 -「ジェノサイド」と「人道に対する罪」の起源』=フィリップ・サンズ著

 (白水社・5616円)

本当の主役は二つの町

 評者は昨年の九月、ウクライナのリヴィウで開催された世界ペン大会に出席した折、同地の国立大学の大ホール(この本の舞台にもなっている)で著者の記念講演を聞く機会に恵まれた。そのときはこの本のことも、その著者のことも何も知らなかったのだが、聞き始めるとすぐに、その比類なく雄弁で魅力的な語りに引き込まれ、このリヴィウという町を起点にして、ホロコーストを生き延び世界に散らばっていった人々の数奇な運命の交錯のあまりに劇的な展開に驚嘆したのだった。

 その講演のもとになっていたのが本書『ニュルンベルク合流』である。六百ページを超える大部の本で、東欧を中心に何世代にもわたる登場人物たちの経歴が絡み合ううえ、ナチスドイツによるホロコーストの歴史や法哲学の問題にも踏み込んでいくため、相当複雑な内容の著作とは言えるのだが、著者の天性の語りの才能と背景に関する該博な知識、そして何よりも主題追求の情熱とがあいまって、凡百の小説などよりもよっぽどエンターテ…

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