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社説

竹本住太夫さんが死去 文楽の土台を強化せねば

 いつの世も変わらない人間の情、喜怒哀楽。心を揺さぶる、磨き上げられた語り芸がそこにはあった。

     人形浄瑠璃文楽(じょうるりぶんらく)の太夫(たゆう)(語り手)で人間国宝の七代目竹本住太夫(すみたゆう)さんが93歳で亡くなった。

     戦後の苦しい時代から修業を積み重ね、300年にわたる人間表現の芸を現代に伝えてきた。

     2014年5月の東京公演を最後に引退するまで芸歴68年。89歳まで現役を務めた太夫は例がなく、文楽界で初めて文化勲章を受けた。

     文楽は、物語の情景や登場人物全員をすべて一人で語り分ける太夫と、心情などを表現する三味線、人形が一体となって織りなす総合芸術だ。江戸時代初期に大坂で誕生。03年には、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に指定されている。

     文楽は太夫の語りが軸になる。「稽古(けいこ)の鬼」と言われた住太夫さんは、自分にも、弟子にも厳しかった。演出家の山田庄一さんは「古い芸を伝える最後の人」と評する。

     それだけに、次代への継承が気にかかる。

     現在、太夫・三味線・人形遣(づか)いを合わせた現役の文楽技芸員は83人で、うち太夫は19人にすぎない。共に人間国宝である竹本源太夫(げんだゆう)さんが15年に亡くなり、その翌年に豊竹嶋太夫(しまたゆう)さんが引退した。現役の人間国宝は不在で、物語のクライマックスを語る太夫の最高位である「切場(きりば)語り」は豊竹咲太夫(さきたゆう)さん一人だ。

     昨年4月、1人入門したが、喜怒哀楽を語り分けられるようになるには、長い修業と人生経験が必要だ。住太夫さんも生前、太夫陣の弱体化を心にかけていた。

     観客育成も大切だ。1990年代から大入りを続ける東京の文楽公演に比べ、本拠地である大阪は低迷が続いた。11年に就任した橋下徹・前大阪市長により補助金削減が打ち出されるきっかけにもなった。周知に力を入れ、10年前に比べ観客は増えたが、近年は再び伸び悩んでいる。

     芸能はただ演者がいればいいというものではない。支える観客がいなければ廃れてしまう。

     文楽は海外公演を重ね、人気も高い。日本が世界に誇る文化を、その国の人間が知らずにいるのは、何とももったいない。

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