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憲法改正の国民投票

選挙より少ないCM規制に懸念

国民投票法が成立して間もなく11年。CMの在り方など課題が指摘される。写真は与党の賛成多数で成立した瞬間の参院本会議場=2007年5月14日、長谷川直亮撮影

 憲法改正案が衆参両院の3分の2以上の賛成で可決されたとき、改正するかどうかは国民投票で決められる。その手続きを定めた国民投票法は、テレビのコマーシャル(CM)に関する規制が一般の選挙より少ないのが特徴だ。識者からは「うその情報に左右されないか」「資金力の多い方が有利になるのでは」などの懸念のほか、放送界に自主ルールづくりを求める声が上がっている。【川名壮志】

    費用も内容も自由

     国民投票法は投票運動期間を60~180日間と規定する。具体的な期間は、衆参両院が憲法改正案について3分の2以上の賛成で発議した後に国会で議決されるが、国政選挙(衆院12日間、参院17日間)と比べて極めて長い。主権者である有権者の知見を深めてもらい、最高法規の改正の可否に熟慮を重ねてもらうためだとされる。期間中、改正案への賛成・反対双方の立場から広報活動が行われる。

     国政選の場合、公選法は選挙運動目的のテレビ・ラジオのCMを禁止しており、CMは政党が「日常の政治活動」の範囲で流すものに限られる。具体的な公約を訴えられるのは公費による政見放送だけだ。

     一方、国民投票は投票日の14日前まで制限規定が設けられていない。テレビ・ラジオのCMのほか、新聞や雑誌の広告も自由だ。不正確な情報や虚偽の内容を含むCMの禁止規定もない。扇情的なイメージ映像や相手方を中傷する内容に陥る恐れもある。多様な意見が出ることは表現の自由を尊重するために守られるべきだとする憲法学者がいる一方で、野党からは一定程度の規制を設ける必要があると訴える声も上がる。

     国政選と違って、国民投票は費用の上限も決められていない。キー局のゴールデンタイムのCMは1本数百万円と言われており、資金力の大きい方が広報活動を有利に展開できるとの指摘が出ている。広告大手「博報堂」元社員で作家の本間龍氏は「資金力のある側がCM放送枠を確保できる広告会社と契約しやすい。現状は、政党交付金の交付ベースでみると自民党が全体の約6割を占めている。大企業からの献金など後押しを受ければ圧倒的な差が出るだろう。全国の民放局でつくる日本民間放送連盟が、公正な選挙を実現できるよう自主的なルール作りを急ぐべきではないか」とみる。

     国民投票に詳しい福井康佐(こうすけ)桐蔭法科大学院教授は、「資金力の弱い方の意見もきちんと有権者に届くように助成制度を設けて資金が少ない側のCMも相応に流れるように底上げを図り、同じ土俵に立てるようにする必要があるのではないか」と話す。

    投票14日前以降も「意見広告」は可能

     期日前投票が始まる投票日14日前には賛成、反対に勧誘するテレビ・ラジオの有料CMは禁止される。テレビの世論に対する影響力の大きさや、勧誘CMが政権への信任投票にもなりうることから冷却期間が設けられた。新聞・雑誌への広告には14日前以降も規制はない。

     代わって衆参それぞれ10人の議員で構成される「国民投票広報協議会」が制作した広報CMが流される。賛成・反対それぞれの立場から客観性・中立性を担保した放送をするとみられるが、具体的な手法は発議後に発足する協議会で決められる。

     国民投票法は投票日14日前から「勧誘CM」を禁じる規定を設けた一方で、純粋な「意見広告」なら放送が可能だとする説もある。政党や団体が芸能人や人気スポーツ選手を起用して、「私は賛成です」などと言わせれば、勧誘CMと同様の効果を上げる可能性がある。

     日本民間放送連盟は「国民投票の運動期間中のCMを含めた放送対応については現在検討中」としている。

    ネットは規制なし

     インターネットの運動には投票日14日前以降も規制はない。ツイッターなどソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)やメールを使った働きかけが可能だとされる。

     2016年の英国のEU離脱を巡る国民投票では、ネットでの活動に各陣営がかなりの費用を割いていたとみられている。福井氏は「ネットの世界では使途の内訳が分かりにくくなるため、『見えない戦い』になってしまう可能性がある」と懸念する。

     課題の多い国民投票の広報の仕組みについて福井氏は「どんな結果が出ても負けた側が一定程度理解するような、透明性が確保できるようなやり方について国会で議論が必要だ」と提言する。


     ■ことば

    国民投票

     憲法96条で規定する憲法改正手続きでは、衆参各院で総議員の3分の2以上の賛成により改正案が発議された後、国民投票で過半数の承認を得れば改正が承認されると定めている。投票年齢は18歳以上となり、投票率に関係なく有効投票数の過半数を得れば改正が認められる。有権者は投票用紙に記された改正案に「賛成」か「反対」のいずれかを○で囲む。改正項目が複数ある場合は、項目ごとに有権者が賛成か反対に○をつける。

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