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幻の科学技術立国

「科学技術創造立国」を目指してきた日本は、中国など新興国が急速に台頭してくる中で存在感を失いつつあります。現場を歩きながら衰退の原因を探り、再生の道を考えます。

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幻の科学技術立国

第1部 「改革」の果てに/5 iPS細胞偏重、世界と差 再生医療の厳しい現実 意義揺らぐストック

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 <科学の森>

 「課題を全て解決できなければ、残念ながらストックは使われない」。昨年12月、文部科学省であった会議で、山中伸弥・京都大iPS細胞研究所長が幹細胞や再生医療の有識者らに報告した。約20分の報告の間、表情は険しいままだった。

 「ストック」とは、再生医療用のヒトのiPS細胞(人工多能性幹細胞)を備蓄するiPS研の主要事業だ。患者本人の細胞からiPS細胞を作れば、移植時の拒絶反応は回避できるとされる。しかし、それでは作製の時間と費用がかさむため、ストック事業では、拒絶反応を起こしにくい特殊な白血球の型(HLA型)を持つ提供者のiPS細胞をあらかじめ複数そろえておく。日本人の大半への移植に対応できる態勢を目指し、2013年に始まった。

 iPS研は、文科省の「再生医療実現拠点ネットワークプログラム」の中核拠点として13~16年度に配分された約100億円のうち、約70億円をこの事業に投じた。六十数人の態勢を組み、昨年11月からは山中さん自らが責任者を兼務。4月27日までに、日本人の32%をカバーする3種類のHLA型のiPS細胞を備蓄した。

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