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世界@日本

広がる#MeToo ブラジル/米国/インド/中東/インドネシア/日本/中国/ドイツ

 米国で始まった「#MeToo(私も被害者)」運動を機に、これまで被害者が声を上げにくかったセクハラやパワハラなどさまざまなハラスメント被害に光が当てられるようになった。日本ではセクハラ疑惑を受けて財務事務次官が辞任する事態となったが、世界各国ではどんなハラスメントがあるのか。事情を追った。

     @ブラジル

    仕事がしたい

     サッカー大国ブラジルでは、男性の観客による女性スポーツ記者へのセクハラ被害を訴える動画が180万回以上視聴される事態となっている。

     きっかけは、スポーツ専門テレビのブルーナ・デアウトリ記者のフェイスブックへの書き込み。3月13日にリオデジャネイロのサッカー場で生中継中、突然、男性にキスされた体験をつづった。

     以前から女性記者が抱きつかれたり、体を触られたりするセクハラは後を絶たなかった。書き込みを見た女性記者ら52人がグループを作り、3月25日に「#DeixaElaTrabalhar(彼女に仕事をさせて)」というハッシュタグ(検索の目印)をソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に開設。デアウトリさんが被害に遭った場面や、記者が「平穏に仕事がしたい」と訴える動画をツイッターとフェイスブックに投稿すると、再生回数が急増した。

     ブラジルの名選手で元日本代表監督のジーコ氏や、ブラジルのサッカー連盟はセクハラ防止運動への支持を表明。柔道連盟やバスケットリーグ連盟も賛同し、運動はスポーツ界に浸透している。【サンパウロ山本太一】

     @米国

    「今年の人」

     「#MeToo」運動のきっかけは、昨年10月、ハリウッドの大物プロデューサー、ハーベイ・ワインスタイン氏が20年以上にわたって若手女優らにセクハラを繰り返してきたとする米ニューヨーク・タイムズ紙の報道だった。女優のアリッサ・ミラノさんがツイッターで、他の加害者によるセクハラ被害にも声を上げることを呼びかけると、一気に告発や連帯の動きが広がった。

     告発対象者は多方面に波及した。連邦議会の上下院議員や有名ニュース番組司会者、企業幹部らにも及び、辞任や辞職に追い込まれる事態に。米誌タイムは昨年12月、毎年恒例の「今年の人」に被害を証言した女優らを選び、表紙に掲載した。

     今年に入ると、女優らは被害者支援キャンペーン「タイムズ・アップ(もうおしまい)」を開始。被害が見過ごされがちな農業や生産業に従事する女性労働者らへの支援を訴えるとともに、被害者の法的サポートなどを行う基金を設立した。ワインスタイン氏のセクハラ疑惑を追及したニューヨーク・タイムズ紙などは4月、米報道界の最高の栄誉であるピュリツァー賞を受賞した。【鈴木一生】

     @インド

    カースト、宗教対立

     インドでは、伝統的身分制度「カースト制」で最底辺とされて差別の対象となってきた「不可触民」へのハラスメントや憎悪犯罪が問題になっている。地元メディアによると、2006年から16年の不可触民への犯罪の認知件数は約42万件で、年々増加傾向にある。

     政府は1989年、不可触民へのハラスメントや犯罪を防止する目的で法律を制定。不可触民への犯罪が疑われた場合は、事前の捜査なしに容疑者を拘束できるとした。一方、最高裁は今年3月、「不可触民への犯罪の容疑者の有罪率が低い」として、容疑者拘束には事前捜査が必要との判断を下した。これに対して不可触民は反発。4月上旬に全土でデモを繰り広げ、治安部隊との衝突などで10人が死亡する惨事となった。また、宗教対立によるハラスメントなども深刻化。近年、多数派のヒンズー教徒が神聖視する牛を食べたなどとして、少数派のイスラム教徒らが襲われる事件が増加している。

     カースト間や宗教間の緊張が高まっている背景について、不可触民の人権団体幹部のラメッシュ・ナサン氏は「14年に誕生したヒンズー至上主義のモディ政権の存在がある。差別が正当化されるような風潮が社会に広がっており、不可触民やイスラム教徒を取り巻く環境は年々悪化している」と話す。【ニューデリー松井聡】

     @中東

    99.3%

     中東でもセクハラが社会問題になっている。国連機関・UNウィメンなどの調査(2013年公表)では、10~35歳のエジプト人女性の99.3%が体を触られたり、性的な言葉をかけられたりするセクハラを経験したと回答。エジプト政府は罰則強化などの対策に乗り出している。

     こうした中、注目されているのがレイプの加害者の免責を定めた法律の撤廃だ。中東では、性的暴行の加害者が被害者と結婚すれば罪を免れるという法律や条項が各地に残る。レイプされても、結婚すれば「女性の名誉は守られる」との考えも根強く、「泣き寝入り」が後を絶たないようだ。だがイラクでは今月12日の連邦議会選を前にこの法律の廃止を目指す動きが起きている。

     モロッコでは12年、両親や裁判官の勧めで加害者と結婚した16歳の少女が自殺。これを機に法律廃止を求める声が高まり、14年に撤廃された。似たような法律はヨルダンやチュニジアなどでも撤廃された。

     一方、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは昨年、シリアやリビアなど同様の法律を維持する国に撤廃を求めた。【カイロ篠田航一】

     @インドネシア

    処女検査

     インドネシアでは、警察や軍隊が入隊を希望する女性に行う「処女検査」に人権団体の非難が集まっている。処女なら道徳心が高いという考えのもと、数十年にわたって行われてきたという。国家警察の広報担当者は取材に「警察官として適正な人材がほしいだけ」と説明し、身体検査などの一環だと主張している。

     国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは3月、「処女検査は女性への暴力で、尊厳を踏みにじる行為だ」と非難する声明を出した。2014年に問題を提起して以降、政府に検査の禁止を求めている。

     17年前に検査を受けた40代の女性軍人は「医師から受けた検査のことを今も忘れられない。処女でないと見なされれば入隊できなかった」と振り返る。軍では大勢の女性が活躍するが、これまでこの制度に疑問を持ったことはないという。「検査を受けることが当たり前だと思っているから」と諦めたように話した。【ジャカルタ武内彩】

     @日本

    告発は「犯罪」?

     4月に発覚した財務省の福田淳一事務次官=4月24日付で辞任=の女性記者に対するセクハラ疑惑を巡る一連の動きから、日本では被害者が声を上げにくい社会の風潮が浮かび上がる。

     疑惑は、同12日発売の週刊新潮が福田氏による女性記者へのセクハラ行為を報じたのが発端。福田氏は当初からセクハラ疑惑を否定し、財務省は調査のために被害女性に名乗り出るよう要請した。この手法は、被害者への配慮を欠くと与党内からも批判を浴びた。

     専門家は日本でのセクハラ告発が広がらないのは「被害者への非難が根強いからだ」と指摘する。

     今回のケースでは、福田氏の辞任表明後に、テレビ朝日が急きょ深夜に記者会見を開き、自社の記者が被害者であると公表。女性記者がセクハラ被害を自社で報じるよう相談したが、上司が2次被害への懸念を理由に却下し、抗議などの対応も取らなかったことが判明した。

     さらに、自社で報じる道を断たれた女性記者が被害を証明する録音データを週刊誌に提供したことについて、テレ朝は「取材活動で得た情報を第三者に渡したことは不適切な行為」とコメント。自民党の下村博文元文部科学相もデータ提供に言及し「ある意味犯罪」と発言して、撤回する一幕もあった。【念佛明奈】

     @中国

    大学VS.学生

     中国では大学でセクハラ告発が相次いでいる。20年前に自殺した北京大の女子学生(当時22歳)の同級生が4月5日に、同大教授だった沈陽氏(62)の実名を挙げてセクハラ行為への謝罪を要求したことから、告発運動に火が付いた。

     中国メディアが報道しただけでも、4月7日に北京師範大▽同14日に中国人民大▽16日に河南大と告発が続く。いずれも女子学生に対する指導教官からのセクハラ疑惑だ。

     北京大は、告発された沈氏を警告処分にしていたことを明かしたが、処分が甘いことから学生ら25人が大学側に詳細な資料を公開するよう請求し、公開を拒む大学側とぶつかっている。沈氏は「悪意ある中傷」と関与を否定。4月23日には情報公開請求をした女子学生が生活指導教官から「無事に卒業できるかな」と脅され、2日間の自宅謹慎を強いられた。その夜、女子学生を応援し、大学側を批判する「壁新聞」が張り出された。

     中国国内では最近、セクハラを告発するネットの書き込みが次々に削除されるようになった。中国当局は「#MeToo」が民主化運動や政府批判に発展する事態を警戒している模様だ。【北京・浦松丈二】

     @ドイツ

    被害を記事に

     ドイツでは2013年、20代の女性記者が当時与党だった自由民主党(FDP)幹部、ブリューデレ議員による自身への性的な発言を記事で暴露し、独国内でのセクハラ論争に火を付けた。

     女性記者は懇談の際、ブリューデレ氏に「(胸を強調する南部の民族衣装)ディルンドルを膨らますことができるね」と言われたと主張。手にキスするなどの行為もあったと明らかにした。記事を受け、メルケル首相は「政治とメディアの間で、プロとして敬意ある関係を支持する」と声明を出すなど多くの議員が記者を擁護した。

     ドイツでは被害者本人が被害を告発することが多い。独ハンブルク大のガブリエレ・フォーグト教授(日本言語文化)は「被害者保護の強化だけでなく、セクハラはささいな問題という認識に変化が必要」と日本の課題を指摘。「国際経験がある若者の間では社会常識の変化が可能だろう。職場や大学などで無関心を装うのではなく、声を上げるべきだ」と話す。【ベルリン中西啓介】

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