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きょうはみどりの日

作品紹介(その1) 映画「羊と鋼の森」 自然は人を幸せに 北海道・トムラウシ出身の青年が主人公

原作者で作家の宮下奈都さん

 きょうは「みどりの日」。新緑の美しい季節、豊かな自然を舞台にした二つの作品を紹介します。北海道・トムラウシ出身の一人の青年がピアノ調律師として成長する映画「羊と鋼の森」と、岐阜県東濃地方が舞台となったNHK連続テレビ小説「半分、青い。」です。

    「森に育てられる調律師」見守って 言葉にならぬ世界描写 原作者・宮下奈都さん

     宮下奈都さんが「羊と鋼の森」を書いたそもそもの始まりは、幼少時から自宅にあったピアノの調律師の言葉だったという。ある時、宮下さんが「このピアノは古いですけど大丈夫ですか」と聞くと、調律師は答えた。「このピアノの中にはいい羊がいますから、まだまだ大丈夫です」

     ピアノのハンマーは羊の毛のフェルトでできている。調律師は、昔の羊は栄養たっぷりの草を食べていて、毛もつやつやしているから大丈夫だと言ったのだ。「その時、調律師の言葉を集めたいという気持ちになりました」

     実際に小説にし始めたのは2013年、家族5人で福井県からトムラウシに1年間、移り住んだのが契機となった。そこはアイヌ語で「神々の遊ぶ庭」と呼ばれる山の中。「言葉にならない自然の美しさを描写したいという欲が出て、それと言葉にするのが難しいもう一つの音楽の世界が結びつきました」

     言葉にならない世界を描写するのは「楽しかった」と話す。「例えば海鳴りを感じるシーンがありますが、あれは森の中を歩いていて、なんで山なのに海鳴りがするんだろうと本当に思ったから。自分が感じたことをそのまま書いていきました」

     音の描写も楽しかったそう。「だから逆に、映画の中でどのように現実の音を作るのか興味がありました。読んだ人の中で自由に鳴っている音を一つの音にするのは大変だろうと。実際に聞いた音は素晴らしかった。監督やスタッフによるこん身の音だと思います」

     トムラウシの自然について「私はトムラウシ以上にきれいな景色に会ったことがない」と言い切る。「毎朝、窓を開けるたび、生きていてよかったと喜びを感じるんですよ。眺めのいい場所で窓を開けることがこんなに人を幸せにするというのは、もしかして自然ってすごく大事なんじゃないかと思いました」

     映画で好きなシーンは板鳥が外村に「ここから始まるんですよ」というところ。「どんな職業でも、何を持っていれば向いているかって最後まで分からない気がするんです。外村君は自分は何も持っていない、才能もないと思っていますが、森に育ててもらったものがあることに気づいていない。でも、私も小説を書き始めた時は自分には何もないと思っていたけれど、どこかで出会っていたり、誰かに育ててもらったりしていたものが引き出され、さらに育てていった面があったと思う。そんなことを外村君に体現してほしかった。外村君がゆっくりでも歩いていく姿を見てほしいです」【井上志津】

    主演の山崎賢人さん=山田茂雄撮影

    「背中押す作品」できた 外村直樹役・山崎賢人さんに聞く

     --ピアノの一音から景色や森のにおいを感じ取る調律師・外村。どんなふうに役作りしましたか。

     外村は山の中で育ち、音やにおいに敏感な青年です。僕は東京生まれですが、木の近くで雨が降った時のにおいとか、東京でも感じることがあるなと思い出しながら、夏のにおいとか冬のにおいとか季節のにおい、木々が揺れる音などをいつも感じるよう意識しました。

     --撮影前、北海道美瑛町で調律合宿をしたそうですね。

     森育ちの感覚をつかんでほしいという監督の希望でもありました。携帯電話もつながらず、音一つない場所。屋根に積もった雪が落ちる音や、土を踏む足音が繊細に聞こえてきました。そんな感覚を知れたということは、大きかったと思います。

     --調律の練習は難しかったですか。

     音を合わせるのって本当に難しくて、何回も練習させてもらい、調律師さんの仕草や表情を参考にして演じました。ちょっとずれた音まではできるようになりましたが、ぴったり合わせるのは難しくて、惜しいといつも言われました。

     --外村と山崎さんの共通点はありますか。

     外村は社会人1年生で、年齢的にも共通する部分がありましたし、調律師と俳優という仕事も似ていると思いました。似ているのは、せりふにもありますが、「こつこつと」「堂々と」することや好きだという気持ちが大事だということ。失敗から始まるということも重なり、頑張ろうと思いました。森が外村の武器という部分は、自分では武器だと思っていないものが実は武器だったとか、ネガティブなものをポジティブに変えていく考えがすごくいいと思いました。それはどの職業でも同じなのかなと。自分にとって背中を押してくれる作品になったと思います。【井上志津】

     ◆あらすじ

    羊と鋼の森

     将来の夢を持っていなかった外村直樹(山崎賢人)は高校でピアノ調律師・板鳥宗一郎(三浦友和)に出会う。板鳥が調律したその音に、生まれ故郷のトムラウシと同じ森のにおいを感じた外村。調律の世界に魅せられ、先輩やピアノに関わる人たちに支えられながら、外村が調律師として成長していく物語。2016年本屋大賞を受賞した宮下奈都さん原作。6月8日全国公開。


     ■人物略歴

    みやした・なつ

     1967年、福井県生まれ。2004年「静かな雨」でデビュー。他に「神さまたちの遊ぶ庭」など。


     ■人物略歴

    やまざき・けんと

     1994年、東京都生まれ。主な映画出演作に「ヒロイン失格」「orange-オレンジ-」「四月は君の嘘」など。

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