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奇跡の傍らで

分娩「集約化」検討を 産科医減少でひずみ=荻田和秀・りんくう総合医療センター産科医

コウノドリ

 昨年、無痛分娩(ぶんべん)の事故が報じられました。無痛分娩の適応や方法など、いろいろな立場の人からさまざまな意見が出ましたが、ここではその是非は置いておいて、そもそもお産は安全なのかからお話ししたいと思います。

     結論から言うと、日本はお産に関して最も安全な国です。ユニセフの「世界子供白書2017」によると、妊産婦死亡率(お母さんが亡くなる率)は年間の出生10万人当たり5人、新生児死亡率(生後28日以内に赤ちゃんが亡くなる率)は年間の出生1000人当たり1人です。フィンランドやスウェーデンなど北欧諸国が上位を占めていますが、これらと並んで、日本はお母さんと赤ちゃんの両方とも成績がよい国です。こうした実績があるため、多くの人が「お産で死ぬなんてあり得ない」と考えるのは当然かもしれません。

     では、すべてのお産が皆すんなりいくかというと、そうではありません。日本では分娩250回に1人は生命に関わる合併症が起こると言われています。放っておけば年間4000人近くのお母さんが死んでしまう可能性があるところを周産期医療従事者の努力で50人にまで下げているのです。これは日本で周産期をやっている我々の誇りです。

     でも、今後ともこのような安全性を保てるのか怪しくなってきています。

     その理由の第一は、産婦人科医の減少です。1970年代前半に生まれた「団塊ジュニア世代」のお産をとった産婦人科医が高齢化でリタイアする一方で、産婦人科医を希望する医学生は増えていません。医学部の定員増加にもかかわらずです。産科医療に対する訴訟の増加が要因として考えられたこともありますが、訴訟の数は減っており、それが原因とも言えなそうです。

     さらにお産の減少が新たな問題を生んでいます。日本のお産は海外の先進国とはかなり状況が違っています。欧米では、高度な産科医療を提供できる病院にお産を集約し、一つの施設で年間数千~数万人の赤ちゃんが生まれるシステムにしているところが多いのです。そうすることで産婦人科医だけでなく麻酔科医や小児科医なども配置し、何か問題があった時にチーム医療で対応できる体制を整えています。

     一方、日本では少子化により1病院あたりのお産の件数は減少し、高度な産科医療を提供する「周産期母子医療センター」でも大半は年間のお産が1000件以下にとどまり、半数は高齢化と人手不足にあえぐ小さなクリニックが担っています。数日間に1回しかお産がなくても、一晩に10人生まれても夜間の医療体制を維持しようとすれば無理がかかるのは明らかです。

     分娩の取り扱い停止によって地元自治体でお産ができなくなったことを問題視する意見もありますが、すべてのお産が安全とは言えない以上、「もしも」を想定した欧米型の集約化を検討すべき時期に来ていると思います。=次回は6月10日掲載


     ■人物略歴

    おぎた・かずひで

     1966年大阪市生まれ。香川医大(現香川大)卒。大阪府立母子保健総合医療センターなどを経て、2008年から現職。産科医を描いたマンガ「コウノドリ」の主人公のモデル。ドラマ版の取材協力も務める。

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