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 就職や通学をしていない若い無業の女性に手を差し伸べる自治体が増えている。悩みを抱えているのに「結婚して養ってもらえばよい」と見過ごされたり、「家事手伝い」に分類されたり。支援から漏れてきた人は少なくない。

     ●「成功体験」を糧に

    「ガールズ編しごと準備講座」を終了し、アルバイトとしてカフェで働くナオさん(右)=横浜市南区のフォーラム南太田で

     赤レンガ造りの建物に、明るい日差しが差し込む。4月下旬、公益財団法人「横浜市男女共同参画推進協会」(川名薫理事長)が運営する「フォーラム南太田」(同市南区)。1階の喫茶「めぐカフェ」で、利用客がランチメニューを選んでいた。日替わりの野菜スープが2種類。アルバイトスタッフの女性がメニューを説明している。

     ナオさん、34歳。かつて「若年無業女性」と呼ばれた。働きづらさに悩む15~39歳の独身女性向けに協会が開いている「ガールズ編しごと準備講座」の修了生。受講後に就労体験ができる実習場所のこのカフェで、今、アルバイトとして働く。

     大学中退。アルバイトを始めては3カ月程度で辞めることの繰り返しだった。働く意欲はあるのに、人間関係でつまずいたり、時間の自己管理ができなかったり。仕事が続かず、自信を失った。

     「家にいるなら何かやって」「働けるのでは」。家族からはそう言われ、居場所もなかった。引きこもりのようになっていた2014年、横浜市泉区役所でガールズ講座のチラシを見つけた。

     「また働きたい」と受講した。久しぶりの外出でこわ張った体をほぐすヨガ、引きこもりを経験した女性の話など……。全11回の講座を終えると、カフェで約3カ月間の就労体験実習を始めた。

     前半は衛生面をはじめ飲食店の基礎知識を学び、後半は週2回、店頭に立つ。スープの材料になる地元産野菜を開店前に洗い、その後、接客に当たる。働く現場で自分の課題を見つけ、乗り越えるのが狙いだ。一般の利用客に応対するという「小さな成功体験」の積み重ね。社会に出るにあたり、それが糧になる。

     時間にルーズだったナオさん。これまでは電車に乗り遅れて職場に遅刻しそうになると、「こんな私はもうダメだ」と自分を責めた。申し訳ない気持ちで勤務先には連絡できなかった。カフェ実習で提出する日誌にその悩みをつづったところ、担当の関根崇年さんから「(自分が乗る)2本前のバスや電車を調べておけば、天候や事故でスケジュールがずれても対応できる」とアドバイスを受けた。講座や実習を経て生活のリズムを自ら立て直し、時間をコントロールできるようになった。

     「笑顔が増えたと言われた。私、そんなにダメじゃないんだなと思えるようになった」

     ●就労不安の克服を

     ガールズ講座は09年にスタート。協会によると、昨秋までに計18回、17~40歳の計375人が受講した。横浜市民に限らず、群馬県や埼玉県から通う人もいる。

     開講のきっかけは、協会が08年に実施した生活状況調査だ。学校や職場に所属していない15~34歳の女性を対象とし、46人から有効回答があった。不安なことに「仕事・職場」を挙げた人は45人。うち33人が不安の要因として「仕事に就けるかどうか」と答えた。また、半数の23人が「漠然と将来が不安」と回答した。学校でのいじめや職場の人間関係トラブルを経験するなど、複数の問題を抱えている人が少なくなかった。

     就労への不安を抱えていても彼女たちは統計上、「家事手伝い」に分類され、問題は顕在化しにくい。脱・引きこもりなどの支援をしている地域若者サポートステーションの利用者は男性が過半数。女性に特化した支援の必要性が浮き彫りになった。

     ガールズ講座は、受講者同士が悩みを分かち合う時間を多く取り、たとえば実務的な「履歴書の書き方」を省くなど、工夫を重ねながら続いている。横浜市の「男女共同参画行動計画」は、若年無業女性の就労支援を「施策」として位置付けた。講座の修了生に対する追跡調査(13年)によると、一度でも収入のある仕事をした人は約6割に上った。来年も再び追跡調査を実施する予定だ。担当の小田美子さんは「能力を生かして働いている人もいる一方で、自宅での介護や家事に忙しく、このまま働かなければ5年、10年先に困る姿に思い至らないケースもある」と話す。

     ●意欲呼び起こす

     横浜市のケースは、他の自治体にも波及している。埼玉県は10年から、若年無業女性に向けた相談会や講演会を開催。支援の手は関東地方だけでなく、西日本にも広がる。

     総務省の就業構造基本調査(12年)で、女性の就業率が全国ワースト3位だった大阪府。出産や育児の時期に就業率が低くなる「M字カーブ」の谷は全国平均より深い。就業支援に取り組むうちに、府はターゲット層に応じた対策の必要性に気づく。大阪、京都両府や兵庫、奈良、和歌山、滋賀の4県の、未婚で無業の18~34歳の女性271人を対象にインターネットで実態調査(14年)をしたところ、現在働いていない理由は「働くことに自信がない」が38・4%で最多だった。この結果を受け、府は本格的な支援に乗り出した。

     2月上旬に大阪市内であったイベント「はたらく学校文化祭」も、その一つだ。インターネット上のメーク動画で人気のユーチューバーを講師に招いたメークレッスンや、モデルによる立ち居振る舞い講座を平日の日中に開き、約150人が参加した。

     「就活色」は、あえて前面に出していない。終業後にメークで印象を変えるコツを紹介するなど、さりげなく就業意欲を呼び起こす要素を織り交ぜる。まず、気軽なイベントで就労支援施設に足を運んでもらい、その後、個別のカウンセリングやビジネススキルの講座につなげている。

     未婚女性が無業のまま年齢を重ねる。親の高齢化などに伴い、やがて生活が立ちゆかなくなる。結局は公的負担増につながりかねない--。支援の背景には、一方で行政側のそんな懸念がある。大阪府就業促進課の藤原由美課長補佐は「地道な支援を続けていきたい」と話す。【椋田佳代】

     ●対象女性は20万人以上

     総務省統計局の昨年の労働力調査によると、15~34歳の非労働力人口(853万人)のうち、家事も通学もしていない人は全国で男女合わせて約54万人。うち女性は約20万人に上る。ただ、主婦以外でも家事を選択している未婚女性がいるとみられ、若年無業女性は、さらに多くなる可能性がある。

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