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米国

39歳でNFLチアに初合格 山口さん「遅すぎることはない」

シンシナティ・ベンガルズのオーディション最終選考会でダンスパフォーマンスを見せる山口紗貴子さん=米オハイオ州で2018年5月6日、Ann Wangさん提供

 米ナショナル・フットボール・リーグ(NFL)のシンシナティ・ベンガルズ専属チアリーダー「ベンギャルズ」に、東京都出身の山口紗貴子さんが合格した。チームが現地10日(日本時間11日)に発表した。山口さんは1979年2月生まれで、39歳での初合格は日本人チアリーダーとしては最も遅咲きとなる。山口さんは「34歳からNFLチアリーダーになることを目指してきました。『諦めなければ願いはかなう。何かを始めるのに遅すぎることはない』と信じてやってきましたが、それが証明できてうれしい」と話した。【小座野容斉】

 山口さんは97年、玉川大学に入学し、ダンスドリルチーム「ジュリアス」に入部してチアダンスを始めた。玉川大ジュリアスはチアダンスの名門で、山口さんが3年の99年には日本学生選手権で優勝、全米学生選手権でも8位に入賞する実績を残した。

 卒業後は仕事の関係でチア活動からはしばらく離れたが、2006年に社会人アメリカンフットボール・Xリーグのオービックシーガルズ専属チアリーダー「シーチア」に加入、採点競技としてのチアではなく「応援とは何か」「お客さんが楽しんでくれる演出は」というスポーツチームを応援する本来の魅力にとりつかれた。10年にオービックがアメフットで日本一になったのを機にシーチアを卒業、仕事優先の生活に戻った。プロフェッショナルチアリーディング協会「オールスタープロチアリーダーズ」に所属して、不定期で企業のイベントや、テレビのバラエティー番組などに出演してきた。

 山口さんはチア活動の傍ら、平日はインテリア関係の会社で12年間営業職として働いてきた。顧客は法人が主で、輸入家具の仕入れ・販売から、内装デザイン、オフィス移転までさまざまな業務をこなし、終電帰りが続く日々もあった。その合間に練習やトレーニングを重ねてきた自分を、チアリーダーとサラリーマンを掛け合わせて「チアリーマン」と表現する。

 13年に、かつて一緒に練習する仲間だった森下昌子さんが、NFLワシントン・レッドスキンズの専属チアリーダーに合格した。山口さんは、レッドスキンズの本拠地、フェデックスフィールドの8万人以上の観客の前で森下さんが踊るのを見て「もっと上に行きたい。この異空間でパフォーマンスをしたい」と強く思った。35歳になった翌14年春にNFLのチアオーディションを初受験した。しかしニューヨーク・ジェッツでは1次で落とされるなど3チームで不合格となった。「いろいろな人に迷惑をかけて挑戦したのに、結果が出せなかった」と、落ち込んだという。この年以来、毎年複数のNFLチームを受け続けたが、良い結果は出なかった。

 転機は昨年だった。「年齢的にもう限界」と考えていた時に、40歳で初めてNFLチアリーダーになり45歳まで活動した、ローラ・ビクマニスさんのエピソードを知った。ローラさんが所属したのが米オハイオ州のシンシナティ・ベンガルズだった。「年齢では判断しない方針」を知って、山口さんは受験する3チームの中にベンガルズを加えた。ディレクターの目に留まり、オーディションでは最終選考まで残った。ダンスの技術を高く評価されただけでなく、就労ビザの問題についても親身になって相談に乗ってくれた。結局はビザの問題で入団の許可が下りず、チームに合流することができなかったが、「今まで受けたどのチームよりもみんな優しくて、日本から来た私のことをケアしてくれた」という。

 山口さんは、今回の受験に当たって、退路を断った。この12年間勤めた会社を辞め、9月に渡米、シンシナティに居を定めた。ベンガルズチア以外は受験しないことにしたからだ。語学学校に通いながら、シンシナティという街を知り、ベンガルズの試合をスタンドから見て、チームのダンススタイルを学んだ。「やれることはすべてやってきました。現役メンバーやディレクターも私の取り組みを見守ってくれており、精神的に応援してくれました」という。

 さらに山口さんには心強い味方があった。「サイドラインプレップ」という予備校のような支援組織だ。元レッドスキンズチアリーダーのジニー・サミュエルさんが10年に設立し、インストラクターはすべてNFLやプロバスケットボールNBAなどのプロチアリーダー経験者が務める。これまでに100人以上のチアリーダーをサポートしてきた。ダンステクニック、フィットネス、食事・栄養などの指導から、衣装選び、面接対策に至るまで、プロチアリーダーとしてオーディションに合格するための具体的なノウハウを丁寧に指導してくれる。合格率は毎年7割を超えるという。

 4月15日の1次選考、16日の2次選考、24・25日の面接というオーディションのプロセスを「すべて落ち着いてこなすことができた」山口さんは、5月6日の最終選考に進出した。最終選考は公開で行われ、シンシナティでできた友人ら30人以上が応援に来てくれた。「本番のパフォーマンスは、楽しくて、あっという間に終わってしまった」という。そして、10日に発表された29人の合格者の中に自分の名前があった。

 「39歳でも、努力次第で体形もダンスも20歳の子に負けないようにできると信じてきた」という山口さん。「これまで多くの挫折があり、どれだけ泣いたか分かりません。サポートや応援をしていただいた皆様へ、感謝の気持ちでいっぱいです。本当にありがとうございました」と語った。

 日本でのチアリーディング・チアダンスの人気は、小中高の児童や生徒の間で高まっており、NFLやNBAのチアリーダーを目指す日本人も年々増えている。山口さんは「5年間挑戦し続けた私の経験が、刺激となり、役に立つのであれば」と、合格の後押しをしてくれた「サイドラインプレップ」で、インストラクターとしても活動していく予定だ。

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