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不動産仲介会社「IRIS」の須藤啓光社長(左)とスタッフの石野大地さん

 LGBTなど性的少数者に配慮した「LGBTフレンドリー」のサービスをうたう企業が増えている。生活に密接に関わる不動産関連業や、2020年の東京五輪に向けて需要が見込める宿泊業の取り組みが目立つ。当事者の悩みに応じながら対応を進める企業を取材した。

     ●不動産仲介「力に」

     「同性カップルでの入居を希望しておられます。お二人とも落ち着いた方々です」

     東京都世田谷区の不動産仲介会社「IRIS(アイリス)」は同意を得た客の人柄などを紹介状に書き込み、物件の管理会社やオーナーに渡す。来客の約8割がLGBT当事者といい、社長の須藤啓光(あきひろ)さん(28)は「LGBTに漠然とマイナスなイメージを持つ人は多い。当事者の力になりたい」と話す。

     須藤さんをはじめ、4人の男性スタッフ全員が同性愛者だ。当事者ならではの視点で接客を心がける。会社はマンションの一室。人目を気にせず来客できるよう看板は出さず、完全予約制だ。

     須藤さんが会社を設立したのは16年4月。同性のパートナーと一緒に家を借りようとして苦労した経験から友人たちを誘った。現在は月平均15組ほどが来店する。

     同性婚が認められていないこともあり、夫婦や婚約者なら入居可能な物件でも同性カップルは断られるケースが多い。須藤さんは「どちらも有職者の男性2人の場合だと所得もあり、貸す側にもメリットがあるのに『ゲイは無理』などと断られる。セクシュアリティーに関係なく誰もが住みたい所に住める社会にしたい」と語る。

     一方で、スタッフの石野大地さん(28)は「メディアで『LGBT』という言葉が盛んに取り上げられ、以前より管理会社との交渉がしやすくなった。理解が広がってほしい」と期待する。

     当事者やその支援者らが対象の「シェアハウス」も出始めた。16年に東京都足立区にオープンした「カーサ・アルコイリス竹の塚」はIRISが管理する物件の一つだ。新築の一戸建てで、1階には広々とした共用リビングやキッチン、2階には4部屋の個室がある。オーナーの男性(39)は「同性カップルが子供を持つのは難しい。相手に先立たれても孤立しない仕組みを作りたかった」と話す。

     入居する同性愛者の男性(33)は「以前住んでいたマンションでは周りに知られないようにパートナーと暮らしていた。ここは同居する人に理解があり、リラックスして生活できる」と喜ぶ。

     ●住宅ローン提供も

    部屋探しの検索条件に加わった「LGBTフレンドリー」の項目を指し示す「SUUMO」の田辺貴久副編集長

     一方、リクルート住まいカンパニー(東京都港区)の住宅・不動産情報サイト「SUUMO(スーモ)」は昨年8月、LGBTの受け入れに積極的な物件の検索サービスを始めた。エリアや家賃、設備といった項目に「LGBTフレンドリー」を加え、チェックすれば物件を絞り込める。

     同社では昨年4月、インターネットを通じてLGBT当事者191人に住まい探しに関するアンケートを実施。同性カップルの41%が「単身契約した部屋に内緒で2人で入居した」と答えた。トランスジェンダーの15%が「書類の性別と外見にギャップがあることを理由に入居を断られた」と回答。SUUMO副編集長で、自身も同性愛者の田辺貴久さん(36)は「安心して入居の問い合わせができる環境を整えたい」と語る。

     アンケートでは「同性パートナーと一緒に住宅ローンを組みたい」と求める声も多かった。昨年10月、楽天銀行は全国のSUUMOカウンターを通して新築マンションを購入する当事者に「LGBT向け住宅ローン」の提供を始めた。自治体の「パートナーシップ証明書」があれば同性カップルが連帯してローンを組める銀行もあるが、国内で初めてこうした証明書がなくても申し込めるようにした。

     ●トイレ性別問わず

    トランスジェンダーの客に配慮したトイレ表記の前に立つホテルグランヴィア京都の池内志帆さん

     「ホテルグランヴィア京都」(京都市下京区)は06年に日本で初めて「国際ゲイ・レズビアン旅行協会(IGLTA)」に加盟した。観光関連の業界では20年の東京五輪・パラリンピックを前に対策が進む。国内ではここ数年で約30社が加盟。一方、米国の加盟企業は400社以上に上る。同ホテルの接遇部担当部長でIGLTA日本アンバサダーの池内志帆さん(49)は「日本は、海外からLGBTへの理解が不足しているとみられている。東京五輪を機に多くの人の意識が変われば」と期待する。

     グランヴィア京都ではトランスジェンダーの客に配慮し、ロビーの多目的トイレに性別を問わず利用できる「ジェンダーニュートラル」を示すマークと英文を表記。またダブルの部屋を予約した同性の客2人を友人と思って「ツインの部屋が空いてますよ」と声をかけるなどしないよう、社員研修も行う。池内さんは「社員教育が大切で大がかりな設備投資は必要ない。どんな企業でも取り組める」と業界の意識改革の必要性を訴える。【村瀬優子】

    関連イベントでPR

     4月28日~5月6日にあった国内最大級のLGBT関連イベント「東京レインボープライド」は2012年から毎年開かれ、今回は過去最多の213の企業・団体が協賛。メイン会場の代々木公園(東京都渋谷区)にブースが並んだ。

     「JobRainbow」(中央区)はLGBTの学生の就活支援サイトや企業との合同イベントを紹介。「シルバーウッド」(港区)はバーチャルリアリティー(仮想現実)で同性カップルの視点を体験できる企業向けの研修プログラムを披露した。イベントを主催するNPO法人の山縣真矢・共同代表(51)は「LGBT支援が企業のイメージやマーケティングにプラスに働く時代に変わってきた」と話した。

    LGBT

     レズビアン(女性同性愛者)▽ゲイ(男性同性愛者)▽バイセクシュアル(両性愛者)▽トランスジェンダー(生まれたときの性と自認する性が一致しない人)--を指す英単語の頭文字を並べた言葉。性的少数者の総称として使われることが多い。

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