結果は初めから見えていたのかもしれない。きのう安倍晋三首相が出席して衆参両院予算委員会で行われた集中審議で、「加計学園」の獣医学部新設問題に関する事実解明はほとんど進まなかった。
なぜか。柳瀬唯夫元首相秘書官の先の答弁に対し、「うそは他人を巻き込む」と批判して矛盾を指摘している中村時広・愛媛県知事の国会招致を与党が拒んだからだ。
中村知事は、柳瀬氏と面会した県職員のメモは信ぴょう性が高いと主張している。メモは、獣医学部新設は「首相案件」だと柳瀬氏が発言し、県担当者らに具体的なアドバイスをしていたことをうかがわせる内容だ。疑問の核心につながるメモであり、知事は面会した日付も示した柳瀬氏の名刺を公表している。
一方の柳瀬氏は面会の事実だけはようやく認めたものの、「首相案件」発言は認めず、誰とどんな話をしたのか、答弁はあいまいだ。
食い違いをただす場が国会だ。中村知事も国会に出る意向を示している。ところが、かつて獣医学部新設を推進し、今回の手続きも適正だったと主張する加戸守行・前知事は進んで招致しながら、今の当事者である中村知事を呼ばないのは全く公平さを欠く。柳瀬答弁にほころびが出るのを恐れているとしか思えない。
集中審議での首相の答弁は結局のところ、「柳瀬氏と関係者の面会がその後の手続きに影響したわけではない」「私が何か指示したわけではない」の繰り返しだった。
柳瀬氏が関係者と面会した後、首相に報告しなかったのは事実なのか。首相が加計学園の獣医学部計画を昨年1月に初めて知ったというのは本当か。焦点となっている疑問も解消されたとは到底言えない。
首相は「加計学園獣医学部の入試倍率は約20倍だった」とも再三強調した。人気があったから手続きは正しかったと言わんばかりの説明だ。
だが言うまでもなく、問われているのは新設の是非ではなく、「加計ありき」で手続きが進んだかどうかだ。首相はそれを承知で、はぐらかしているように見える。
解明をまた後戻りさせてはいけない。必要なのは事実の確認だ。自民党総裁である首相が認めれば中村知事の国会招致は実現するはずだ。