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近大原子炉

再運転1年 豆球、ともす安全 最大出力わずか1ワット 1600人、利用人材育成へ存在感

原子炉の前で近畿大原子力研究所職員(左端)から説明を受ける千代田テクノルの新入社員=大阪府東大阪市で、松本光樹撮影

 近畿大原子力研究所(東大阪市)にある教育研究用の原子炉が、昨年4月に運転再開して1年が過ぎた。国内の大学研究炉3基のうち再開第1号とあって、今年3月末までに約1600人が利用した。東京電力福島第1原発事故後、原発の安全性や放射性物質の影響に対する学生の関心は高まっているという。研究所側は、国内では数少ない教育施設としての存在意義を強調している。【松本光樹】

     「16時24分、原子炉、0・01ワット。臨界になりました」。4月下旬、放射線防護服や線量計などを扱う商社「千代田テクノル」(東京都)の新入社員約20人が同研究所を訪れた。操作室に入った社員は緊張した面持ちで高さ2メートル、直径4メートルの円筒形の原子炉をガラス越しに見ながら、制御棒を上下させて出力を確認した。

     原子炉の最大出力は1ワット。豆電球1個をともせるほどで、一般商用炉の約10億分の1だが、研修を受けた川崎晃平さん(24)は「教科書で仕組みは学んだが実際に動かすのは初めて。貴重な体験だった」と話した。

     原子炉は2014年2月の定期検査から運転を停止した。原子力規制委員会の新規制基準に合格するため、計約1億円をかけて設備を改修したり専門家を雇ったりし、昨年4月に運転を再開した。

     再開後の1年間で約400人が研究や実習のために使い、約1200人が見学に訪れた。見学者数は毎年2000人前後いた福島原発事故前に届かないが、停止中の16年度から500人近く増えた。

     物理や化学などの基礎教育のほか、放射性廃棄物の分類や放射線治療への応用などの研究も進む。若林源一郎准教授は「原子炉や放射線の安全性を意識する学生が増えている」と実感するという。

     修士1年の西小野華乃子さん(22)は東北の野生キノコによる内部被ばくを研究している。人体に与える影響を正確に見積もり、早い復興へつなげたいとの思いがある。「今は『安全』と『安心』の間が空いてしまっていると思う。その間を埋めていけるような人になりたい」と語る。

     4年の西田優哉さん(22)は原子炉の耐震診断や安全設計評価をする企業に就職が内定した。新規制基準の運用が始まり、最も人材が必要とされる分野の一つだ。「安全か危険かを判断できる知識をつけ、身近な人を守りたい」と意気込む。

     国内の大学研究炉は、昨年6月と同8月に運転再開した京都大の2基を含め3基のみ。「原子力研究の灯は消してはならない」と強調する伊藤哲夫所長は「国内の研究炉が減り、近大原子炉の重要性は増している。原子力を取り扱う緊張感、責任感を持った人材を育てていきたい」と話す。

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