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ミルクを飲むアマゾンマナティー=ブラジル北部マナウスで
アマゾンマナティー=熱川バナナワニ園提供
多目的棟をバックに笑顔を見せる山極京都大学長(左)ら=同クイエイラスで

 京都大野生動物研究センターとブラジル国立アマゾン研究所(INPA)が今月8日、同国北部アマゾン川流域のクイエイラスに研究拠点「フィールドステーション」を開設した。研究者が熱帯雨林にすむ生物や生態系の現地調査をする際、足場として活用する。

     ●実態調査、難しく

     「周りに動物はいるが、隠れている。アフリカのサバンナより種類は多い。ただ、サバンナの動物のように表には出てこない」。フィールドステーション周辺の密林を案内してくれたINPAの米国人研究者マリオ・コーンハフト氏が話した。

     30年前、コーンハフト氏がINPAで鳥類研究を始めた時、アマゾンの鳥類リストは350種類だった。その後8年間で50種類を追加したが、実態調査は難しく、現在も400種類にとどまるという。「雨期や乾期にだけ現れる鳥もいる。新たに見つけるのに数年かかることもある」と説明する。

     木の上部には花や果実があり、多くの生き物はそこをすみかにしている。日本人研究者は「上部を調べるのは困難で、よく分かっていない」と話す。未解明の生態を知るためには、長期間の調査を可能にする新たな研究拠点が必要だったという。

     ●絶滅危惧種を保護

     フィールドステーションは伊藤忠商事(東京都)、国際協力機構(JICA)などの協力で京大とINPAが2014年から進めるフィールドミュージアム構想の中核に位置づけられている。博物館を建設するのではなく、野生生物を展示物とみなして調査・保全し、研究で得た科学的な知識を社会に広める構想だ。そして、この構想の核は、絶滅危惧種アマゾンマナティーの保護や飼育、野生復帰の事業だ。京都大とINPAが取り組み、これまでに19頭をアマゾン川に戻した。

     アマゾンマナティーは浮草などを餌とする草食の哺乳類で、体長3メートル、体重400キロほどに成長する。ゆったりとした愛くるしい動きで人気があり「アマゾンの象徴」として知られるが、濁った川で生活しているため、生態には不明な部分も多い。かつては食用や丈夫な皮を目的に狩猟され、ブラジルでは1974年に禁猟となった。しかし、今も密猟などで減少が続いている。

     JICAから派遣されているINPA研究員、ディオゴ・ソウザ氏(33)によると、漁の網にかかってしまったマナティーの赤ちゃんが保護されるケースが多いという。保護された赤ちゃんは、マナウスの水槽で2~3年飼育した後、野生に近い環境の飼育施設がある湖に移す。さらに2~3年、餌の取り方などを覚えて環境に適応すると、アマゾン川に戻される。現在、水槽で43頭、湖で13頭が飼育されている。ソウザ氏は「以前は野生に戻したマナティーはすぐ死んでしまったが、環境に適応させるプロセスを挟むことで野生復帰がスムーズになった」と話す。

     ●環境教育にも活用

     環境保護には住民の理解が欠かせないが、知識が乏しい住民も少なくないという。フィールドステーションでは地元住民や旅行者も受け入れ、環境教育やエコツーリズムの拠点としても活用する方針だ。研究者がガイド役として住民らと密林を歩き、生態系を観察しながら解説などをするという。近くに住む教師のアンジェラ・オリベイラさん(50)は「環境保護にはゴミを捨てないなど日々の意識が大切。子供もここで勉強させ、意識を高めたい」と意気込む。INPAのルイス・デフランサ所長は「施設は人類と動植物、自然が共存するシンボルだ。地域住民にとっても素晴らしいプロジェクトだ」と期待している。【クイエイラス(ブラジル北部)で山本太一】


    宿泊棟で長期滞在可能に

     フィールドステーションは、アマゾン川支流のクイエイラス川沿いの生物保護区内に建設された。アマゾン川中流の都市マナウスの北西約50キロ、マナウスから船で約4時間の距離だ。総面積は約750平方メートル。食堂や調理場を含む多目的棟と、60人がハンモックで就寝できシャワーも備えた宿泊棟がある。これまで研究者は近くに停泊した船内などに滞在していたため、長期の調査が難しかったが、大きく改善された。

     8日の開設式には京大の山極寿一学長をはじめ、約100人が参加。山極学長は「京都大はアジア、アフリカの熱帯雨林研究で実績を上げてきた。アマゾンで先駆的研究をするINPAと協力して三つの熱帯雨林がつながり、生物多様性を保全するための研究が進む」と期待する。

     京大野生動物研究センターの幸島司郎教授は「50年以上使えるような頑丈な施設ができた。若い人を巻き込み、人的なネットワークを発展させる場になる。ここを活用し、いろんな試みをしてほしい」と話した。


    アマゾンの熱帯雨林

     南米のアマゾン川流域に広がる550万平方キロの世界最大の熱帯雨林。ブラジルを中心にコロンビアやペルー、ベネズエラなどに及ぶ。全世界の熱帯雨林の半分以上を占め、日本の国土面積の15倍にあたる。約6万種類の植物や1000種類以上の鳥類、300種類以上の哺乳類が存在するとされるが、未解明な部分が多い。道路やダム、鉱山の開発、森林伐採、気候変動などにより生態系の破壊が進んでいる。

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