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旧優生保護法

強制不妊、妻に言えず 提訴の男性「人生返して」

 国は人生を返してほしい--。旧優生保護法下での不妊手術を受けた北三郎さん(75歳、活動名)=東京都=は、手術を受けた事実を妻にも言えず、長い間苦しんできた。17日、東京地裁に国家賠償請求訴訟を起こした北さんは「裁判で強制不妊手術の実態を明らかにし、心の傷を少しでも埋めたい」と訴えた。

     午前9時半過ぎ。弁護団は「被害者に今こそ救済を!」と書かれた横断幕を掲げ、東京・霞が関にある東京地裁前を行進した。提訴後の午前10時から記者会見した代理人の関哉直人弁護士は「北さんは手術で精神的な苦痛を被ってきた。憲法違反の法律に基づき、手術を進めた国の責任を問いたい」と述べた。

     訴えによると、北さんは中学2年の時、仙台市内の児童自立支援施設(当時の教護院)にいたが、目的を知らされないまま手術を受けた。「1週間ほど歩けないほどの痛みが続き、夜も眠れなかった」という。

     この施設は「家庭環境」などを理由に生活指導が必要だとされた児童らを収容していた。北さんは、障害などの診断を受けたことがないと言い、弁護団は「法の趣旨が拡大解釈されていたのではないか」とみている。

     北さんは、不妊手術を理由に結婚を諦め、「生涯独身でいよう」と考えていたが、1972年に縁談があり、結婚した。だが、手術のことは妻に言えずにいた。夫婦は子を授からないことで親族の中でも肩身の狭い思いをしたという。妻が他人の子をあやす姿を見るのはつらく、自分が情けなくも感じた。

     それでも、妻と二人三脚で人生を共にしてきた。妻が白血病に侵され、余命わずかになった5年前、病室で初めて不妊手術のことを打ち明けた。妻はただうなずき、「しっかりとご飯を食べるのよ」と気遣った。息を引き取ったのは、“告白”から数日後だった。

     今年に入り、強制不妊手術の問題が新聞やテレビで取り上げられているのを目にし、勇気を出して弁護団に電話した。弁護士の助言もあり、宮城県に手術記録の公開を求めようとした前日、姉から「手術したことは知っていた」と初めて打ち明けられた。

     公開請求に対する県の回答は「(記録の)不存在」。弁護団は「(北さんのように)手術の記録がない人が圧倒的に多い。今回の訴訟は救済の幅を広げる試金石になる」と強調する。

     北さんは会見で「つらい思いで今日まで来た。国には(訴訟で)真実を述べてほしいと思う」と話し、「(自分のように)傷ついている人は大勢いるはず。一緒に手をつなぎ、裁判を起こしてほしい」と呼びかけた。【服部陽】

    「他の被害者も勇気を」

     仙台地裁に提訴後、原告の飯塚淳子さん(活動名)も記者会見し「やっと提訴に踏み切りました。20年以上、(強制不妊手術の被害を訴える)声を上げてきた。長かった」と声を絞り出した。弁護団長の新里宏二弁護士は「(当事者として初めて社会に被害を訴えた)飯塚さんが提訴することができたことは感慨深い。国に早期の補償と謝罪を求めたい」と話した。

     札幌地裁に提訴した小島喜久夫さん(76)は「一人でも多くの当事者を勇気づけたい」との思いから実名での報道を望んだ。妻と並んで臨んだ提訴後の会見で「手術を誰にも言えず、つらい思いをしてきたのを吐き出した」と語り、同じ思いをした人たちに呼び掛けるように言った。「私も闘うから、みんな出てきてほしい」【本橋敦子、源馬のぞみ】

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