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/上 6年の試行錯誤、ひな4羽ふ化 コウノトリペア、県内で2世 /福井

獣医師の木村美貴さん。左のモニターでコウノトリの様子を観察している=福井県越前市都辺町で、大森治幸撮影

 おぼつかない様子ながらも、上げ下げを繰り返す四つの頭。パソコン画面に浮かぶその映像を見て、獣医師の木村美貴さん(34)が言った。「親鳥がはき出したえさのドジョウにちゃんと反応している。4羽とも健康ですね」。15日、越前市都辺町にある県自然環境課のコウノトリ支援本部。待望の2世誕生から1週間が過ぎ、職員にも安堵の表情が広がる。「キュー」。ひなの時だけ聞けるという愛らしい鳴き声がパソコンから響き、木村さんの目が弧を描いた。

     成鳥ともなれば1メートル超の体長を誇り、優雅に翼をはばたかせる国特別天然記念物のコウノトリは、在来種としては国内最大級の鳥だ。生息には餌のドジョウなどが潜む田園が不可欠で、県は豊かな自然環境のシンボルとして2011年12月に兵庫県豊岡市の県立コウノトリの郷公園から「ふっくん」(雄21歳)と「さっちゃん」(雌20歳)を借り受けた。越前市白山地区で飼育を始めて6年半。産声を上げた4羽のひなは、ペアが県内で授かった初めての家族だった。

     長い試行錯誤があった。ペアが13~17年に産んだ計22個の卵はいずれも無精卵で、木村さんは飼育ケージ内の様子を24時間録画する映像を確認し、ペアの行動をメモにしたためる日々を繰り返した。無精卵を産んだ14、16、17年には借り受けた有精卵をペアに温めてもらう「托卵(たくらん)」も試みた。

    福井県越前市でふ化した4羽のコウノトリ。「キュー」というひな特有の愛らしい声で鳴く=福井県越前市都辺町で2018年5月15日、福井県自然環境課提供

     そんな真摯な取り組みに加え、今回のひな誕生はある偶然が作用していた。昨年1月、隣県で確認された鳥インフルエンザである。

     ペアを普段飼育する広さ約300平方メートルのケージは、冬季に積雪を避けるため屋根代わりのネットを外していた。1羽でも飛び去れば、それまでの取り組みが水泡に帰す。このため福井県は確立された飼育方法にならい、例年11~12月に羽の一部を切ってペアが飛ばないようにしていた。

     だが昨年1月、石川県加賀市の池でカモ科のヒシクイから鳥インフルエンザウイルスが見つかる。冬季だ。ペアがいるケージは屋根代わりのネットが外れている。感染した野鳥がケージに入ってくる可能性があった。やむなく約50平方メートルの避難用ケージにペアを移した福井県の飼育担当者は「この年はもう卵を望めないだろう」と諦めたことを覚えている。狭い場所で過ごすストレスで、繁殖活動への影響は必至とみられていた。

     ところが鳥インフルエンザの脅威も終息した同4月、通常のケージに戻されたさっちゃんは5個の卵を産む。いずれも無精卵だったが、飼育担当者たちからは驚きの声が上がった。子孫を残す。ほとばしるような生命力の強さに、県自然環境課の佐々木真二郎課長が同8月の繁殖検討会で次の提案をしたのはごく自然なことだった。

     「交尾の体勢が不安定になっていた可能性もある。次の冬は羽を切らず避難用ケージに移してみてはどうか」

     県が初の試みにかじを切り、ペアが有精卵を産んだのはその8カ月後、今年4月のことだった。コウノトリの郷公園から借り受け、6年半がたとうとしていた。【大森治幸】

          ◇

     小浜市で国内最後となった野生のひなが確認されて54年。越前市で県が飼育するコウノトリのふっくん、さっちゃんが待望の2世を産んだ。ふ化した4羽を見守る飼育員や地元住民らの取り組みを報告する。

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