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メディア時評

加害者側を見据えるセクハラ記事を=ライター・高崎順子

高崎順子氏

 財務省の福田淳一前事務次官の疑惑で、一気に世論に火がついたセクハラ問題。筆者はそれらの報道に、共通するいらだちを禁じ得ない。

     それはこの問題のほとんどが、被害者側からしか語られないことだ。被害者がどのような人物で、どのような状況で、何をされたか。加害者との関係はどうだったのか--。被害者側の検証に終始する記事には、「セクハラはされる側に落ち度がある」との印象を読者に与えかねない危険を感じる。

     セクハラは人災だ。加害者が性的言動を被害者の合意なく押し付け、心身に傷を負わせる。つまり「やる人」がいなくなれば、なくなるものだ。なのになぜ被害者側の防護ばかりが語られるのか。一定確率で避けがたく起こる、不慮の天災や事故のように。

     毎日新聞の社説(4月30日朝刊)は、2本の社説を載せるスペースを割きセクハラが横行する日本を「これが21世紀の先進国か」と憤りつつ、被害者批判の理不尽を糾弾した。しかし、加害者への視点が抜け落ちていたのは物足りなかった。なぜ人はセクハラをするのか、その心理学的研究はなされているのか。加害者に共通する社会的特性はあるのか、加害者が発生しやすい組織に特徴はあるのか。このような加害構造の検証がされないので、加害の芽を早期に摘み取り、抑制する方策の議論もされない。

     財務省出身者の苦言(サンデー毎日5月6・13日号)、財務省幹部を対象にしたセクハラ研修(朝日新聞5月10日朝刊)など、加害者側の状況を報じる記事も出てきてはいる。しかし、セクハラ防止のための対応を各省庁の責務とする人事院の規則を財務省がどう運用しているかなど踏み込みが足りず、歯がゆい読後感が残る。

     防護策や被害者保護がセクハラ問題に不可欠であることは自明である。しかし、それと同じだけ加害者対策も重要だ。メディアが本気でセクハラ問題の改善を願うなら、不毛な個人攻撃に終始せず、より広範に加害構造を見据える視点を持ってほしい。(デジタル毎日などを基に論評)

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