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カンヌ映画祭便り

第9日 細田守監督「未来のミライ」 アニメだからできる“主人公は4歳児”

カンヌ国際映画祭と並行して開かれている「監督週間」の会場で、観客にあいさつする細田守監督(左)と、主人公の声を担当した女優の上白石萌歌さん(右)=フランス・カンヌで2018年5月16日、小林祥晃撮影
カンヌ国際映画祭と並行して開かれた「監督週間」で、上映終了後、観客からの拍手に喜びの表情を見せる細田守監督(中央)=フランス・カンヌで2018年5月16日、小林祥晃撮影

 カンヌ国際映画祭は9日目。いよいよ終盤に入りましたが、映画祭の期間中、メイン会場の外ではさまざまな関連の催しが開かれています。中でも大きなものが「監督週間」「国際批評家週間」という映画上映イベントです。いずれも映画祭のコンペティションと同じように、世界から選び抜かれた作品が上映され、映画祭の一部門のように注目されています。

     今年は、監督週間の上映作品に、細田守監督のアニメーション作品「未来のミライ」(今年7月公開)が選ばれました。16日には、その公式上映がカンヌ市内の劇場で開かれました。今日は映画祭のメイン会場を出て、監督週間の会場から報告したいと思います。

     フランスで日本のアニメが人気なのはよく知られています。細田監督の映画も、これまでに「時をかける少女」や「バケモノの子」など全作品が公開されているそうです。この日の上映会場は850人収容の大きな劇場でしたが、開始の約1時間前には入場待ちの長い行列ができ、「ホソダアニメ」の人気ぶりを伝えていました。

     「未来のミライ」の主人公は、4歳の男の子、くんちゃん。ある日、一家に妹の未来ちゃんが生まれ、家族の関心が妹にばかり集まるようになります。くんちゃんが1人、庭でふてくされていると、目の前に成長した妹が現れて「お兄ちゃん」と呼びかける……という話です。細田監督自身が「2人目の子どもが生まれた時に着想した作品」と言い、脚本も手がけています。

     上映会場には細田監督と、主人公の声を担当した女優、上白石萌歌さんも駆けつけ、観客と一緒に映画を楽しみました。上映中はくんちゃんの愛らしい動きに、笑いや拍手が何度も上がりました。エンドロールが流れると観客が立ち上がって拍手を始めました。監督や上白石さんは満面の笑みで手を振ったり、手を胸にあてたりして、感謝の気持ちを表していました。

     監督週間で上映される作品は20本ですが、その中でアニメはこの1本だけです。日本のアニメが世界で高く評価されているとはいえ、カンヌ映画祭の「本祭」でも、監督週間でも、アニメ作品がノミネートされることは大変珍しいことです。上映に先立ち、報道陣の取材に応じた細田監督も「カンヌ映画祭にアニメが選ばれることはほとんどないと思っていました。関係者が作品を非常に気に入ってくれたのか、あるいは、今年のカンヌに呼ぶべき何かを見いだしてくれたのか、いずれにせよ、多数の実写映画に交じって選ばれたことはとても光栄です」と喜びを語っていました。

     今回の作品で、細田監督は大きなチャレンジをしたと言います。「主人公を4歳児にしたことです。4歳児が登場する映画はたくさんありますが、主人公としては最も低い年齢ではないでしょうか。『となりのトトロ』のメイちゃんも4歳という設定でしたが主人公ではありません」

     主人公を4歳児にするということは、4歳の視点で映画を作るということに他なりません。「実写映画で4歳の子役に主役の演技を求めるのは難しいのではないでしょうか。しかし、アニメならそれができます。アニメというのは一つの技法。実写映画ではできないけれど、アニメなら実現できることがどこかにあるのではないか。常にそれを考えて映画を作っています」

     細田監督のように、アニメの可能性を切り開いていく製作者が増えていけば、近い将来、カンヌ映画祭のコンペティション部門にアニメが何本も選ばれる日が来るかもしれません。

     今、世界の映画興行界では、米大手動画配信会社「ネットフリックス」など、インターネットを通じて顧客に映像作品を配信する事業者への反発が高まっています。昨年のカンヌではそれが大きな論争となり、映画祭の事務局は今年から、インターネット配信だけで劇場公開をする予定のない「映画」はコンペ部門から除外するという方針を掲げました。

     そんな保守的な顔を持つカンヌ映画祭ですが、細田監督の作品が上映されたように、時代とともに、変化している面もあります。

     「セ・カンヌ」。伝統と革新がせめぎ合う場、それもカンヌなのでしょうか。【小林祥晃】

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