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米大統領選

ロシア癒着疑惑 本格捜査1年 モラーVSトランプ、攻防激化

 ロシアの2016年米大統領選介入とトランプ陣営との癒着疑惑「ロシアゲート」を巡り、捜査を指揮する特別検察官に元米連邦捜査局(FBI)長官のロバート・モラー氏が任命されてから17日で1年を迎えた。周囲に迫る捜査に「魔女狩りだ!」といらだちを募らせるトランプ大統領。11月の米中間選挙を控え、「モラー対トランプ」の攻防の激化が予想される。【鈴木一生、ニューヨーク國枝すみれ】

    「全ての事象」対象

     「ロシア政府とトランプ陣営とのつながりや、その捜査過程で派生するあらゆる事象」

     司法省がモラー氏に指示した捜査の対象は幅広い。そのためモラー氏は、脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)などの金融犯罪に特化した「内国歳入庁(IRS)」の捜査官らも加えた捜査チームを編成。FBIとも連携して疑惑の解明にあたってきた。

     米メディアによると、これまでにホワイトハウス関係者ら数十人が事情聴取された。今年に入り、大統領選でトランプ陣営の外交政策顧問だったセッションズ司法長官や、トランプ氏の最側近だったバノン前首席戦略官らもその対象になった。

     既にトランプ陣営からは4人が訴追された。ロシア政策の中心だったフリン元大統領補佐官(国家安全保障問題担当)=虚偽供述罪で起訴=や、マナフォート元選対本部長=資金洗浄の罪などで起訴=らだ。トランプ氏と大統領選を戦ったクリントン元国務長官を中傷する情報を拡散したなどとして、ロシアの13人の個人と3団体も起訴された。

    資金の流れに着目

     捜査の核心は2点。ロシアによる選挙介入へのトランプ陣営の共謀▽トランプ氏による司法妨害--を証明できるかだ。米メディアは16日、モラー氏が司法省の指針に基づき、現職大統領であるトランプ氏本人は起訴しないとの考えを弁護団に伝えたと報じた。だが、刑事責任とは関係なく、捜査結果の内容次第では、トランプ氏の弾劾につながる可能性はある。

     共謀に関し、モラー氏が着目するのが2016年6月にニューヨークのトランプタワーであった会合だ。トランプ氏の長男ジュニア氏と娘婿クシュナー大統領上級顧問、マナフォート被告がロシア政府と関係するベセルニツカヤ弁護士らと面会。ジュニア氏は事前に、ロシア政府を情報源とする、クリントン氏にとって不利な情報を提供するともちかけられていた。ジュニア氏は昨年7月、会合を認める一方、「有益でなかった」と主張した。

     また、大統領選期間中から政権移行期を通じ、フリン氏やセッションズ氏、クシュナー氏ら陣営幹部が度々、キスリャク駐米大使(当時)らロシア政府関係者と接触。密接な関係があったことをうかがわせるが、「状況証拠」にとどまっている。

     こうした中、モラー氏はトランプ氏の資金の流れから、ロシアとのつながりをたぐろうとしているようだ。そのキーパーソンとされるのが、トランプ氏の個人弁護士を長年務めるコーエン氏だ。

     FBIは今年4月、コーエン氏の事務所や滞在先のホテルを捜索した。コーエン氏は、大統領選直前にトランプ氏との性的関係を公表しようとしたポルノ女優に対し、口止め料13万ドル(約1400万円)を送金した。その原資を突き止めるための捜索だったが、税務書類やトランプ氏との通信記録などが押収されたという。

     さらに米主要紙は今月8日、ロシアの大富豪の関係会社がコーエン氏のペーパーカンパニーに50万ドル(約5500万円)の「コンサルタント料」を支払っていたと報道。ペーパーカンパニーはコーエン氏がポルノ女優への送金のために設立したとされる。また大富豪はプーチン露大統領と親しく、トランプ氏の大統領就任式にも出席したという。モラー氏はコーエン氏と大富豪の聴取を既に行っている。

    中間選挙に影響甚大

     司法妨害疑惑は昨年5月のコミー前FBI長官解任を巡るものだ。フリン被告とロシア側との関係を捜査していたコミー氏に、トランプ氏は「やり過ごす」よう求めたとされる。コミー氏は翌月の上院情報特別委員会の公聴会で「捜査中止の指示と受け止めた」「ロシア疑惑の捜査を理由に解任されたと思う」と述べた。

     米ニューヨーク・タイムズ紙は今年4月30日、モラー氏がトランプ氏への事情聴取が実現した場合の40以上の質問リストを弁護団に提出したと報じた。「なぜコミー氏をFBI長官から解任したのか?」など、多くはフリン被告とコミー氏に関するものだった。

     トランプ氏への事情聴取について、モラー氏は今年1月に弁護団に打診。その対応を巡る意見の相違から、弁護団の陣容も変容した。モラー氏と協調路線とされた筆頭弁護士のダウド氏が3月に辞任し、検察官出身で元ニューヨーク市長のジュリアーニ氏が参加。「6月の米朝首脳会談の方がはるかに重要だ。トランプ氏が事情聴取を受けるとしてもその後だ」。ジュリアーニ氏は今月11日、AP通信のインタビューにそう答えた。

    政権いらだち強く

     今年11月に初の「信任投票」ともいえる中間選挙を控えるトランプ政権。捜査終了が選挙に近づけば近づくほど、その内容によっては政権と与党・共和党にとって打撃となることが想定される。

     捜査が終結すればモラー氏は報告書をまとめ、ローゼンスタイン司法副長官に提出する。その内容に応じ、米連邦議会が弾劾手続きの要否を判断することになるとみられる。

     弾劾訴追の権限を持つのは下院だが、それには過半数の賛成が必要。さらに大統領の罷免には弾劾裁判を行う上院で3分の2以上の同意を得なければならない。現在は上下両院とも共和党が過半数を占めるため、弾劾のハードルは高いが、中間選挙では野党・民主党の優位が伝えられる。

     「もう捜査を終了する時だ」。ペンス副大統領は今月10日の米テレビ番組でいらだちをあらわにした。


    ロシアゲートを巡る主な経緯

    2016年

     6月 ロシア政府が関与するハッカー集団による民主党陣営へのサイバー攻撃疑惑が発覚

     7月 FBIがトランプ陣営とロシアの関係の捜査開始

    11月 米大統領選でトランプ氏当選

    12月 オバマ政権がサイバー攻撃への報復措置としてロシア外交官を国外追放。大統領補佐官就任前のフリン氏がロシア側と接触

      17年

     1月 トランプ政権発足

     2月 ロシアとの接触を巡り、トランプ氏がフリン氏更迭

     5月 トランプ氏がコミーFBI長官を解任。司法省が元FBI長官のモラー氏を特別検察官に任命

    10月 マナフォート元選対本部長らの起訴を発表

    12月 フリン氏の起訴を発表

      18年

     2月 ロシアの個人13人と3団体を、米大統領選に不当に介入した罪で起訴したと発表

     4月 FBIがコーエン氏の事務所などを家宅捜索


     ■ことば

    特別検察官

     米大統領や政府高官らが関与した疑惑を捜査・訴追するため、司法省が任命する捜査官。必要に応じた予算や人員を確保できる。幅広い捜査権限を持つが、任命権者への捜査の報告が求められており、政府から完全に独立しているわけではない。セッションズ司法長官はロシア側との接触があったため、今回はローゼンスタイン副長官がモラー氏を任命した。

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