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教育改革シンポジウム

第10回高大接続教育改革シンポ 「主体性」を入試でどう評価 

パネルディスカッションする、(左から)大学通信の安田賢治氏、駿台教育研究所の石原賢一氏、文部科学省の山田泰造氏、関西学院大学の尾木義久氏、順天中学・高校の長塚篤夫氏

 文部科学省が進める大学入試改革によって、大学入試が大きく変わろうとしている。個別の入試では、従来の「知識偏重型」から、学力テストに加えて主体性や協働性なども評価する「多面的総合型」へと転換する。5月8日に東京都千代田区であった「第10回高大接続 教育改革シンポジウム」(駿台予備学校、大学通信、毎日新聞社共催)では、主体性の評価のあり方を中心に熱い議論が交わされた。【金秀蓮】

     2020年度までに実施される入試改革の大きな特徴は、大学入試センター試験に代わり大学入学共通テストが導入されることだ。さらに、個別入試は知識偏重型から、「知識・技能の確実な習得」「思考力・判断力・表現力」「主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度」--の学力の3要素を、多面的・総合的に評価するようになる。

     それに伴い、文科省は新たな入試のルールを定め、21年度入試から実施要項を見直す。「学力不問」との批判もあった推薦やAO入試については高校側が作成する調査書などの出願書類だけではなく、共通テストや小論文を必須とする。また、一般入試では筆記試験に加えて主体性などを積極的に評価するために、調査書をどのように活用するかを大学の募集要項に明記するようになる。

    文科省の山田泰造氏

    学力の3要素大切に

     シンポジウムでは冒頭、文科省大学振興課の山田泰造大学入試室長が基調講演した。山田氏は「人工知能(AI)の発達など、予測しにくい新しい時代を子どもたちは生きていく。学力の3要素を大事にすることでたくましく生きる子どもたちを養成していくと考えている」とした上で「大学の入試が知識(暗記)に偏り、この考え方の足を引っ張るようなことがあってはいけない」と強調した。

     調査書の活用については「出願資格なのか、加点なのか、点数が同じ時の総合評価の一環なのかなど、生徒の頑張りが入試にどう反映されるかが明らかになる」と話した。また、高校側が作成する調査書については大学に提供しやすいよう電子化に向けた議論が進んでいるとした。

    関西学院大の尾木義久氏

    3年間の成長を記録

     続いて、関西学院大学アドミッション・オフィサーで学長特命の尾木義久氏が講演。同大の入学者の学力を追跡調査したところ、入試の成績順位と入学後の学力は必ずしも相関しなかったといい「学びに向かう力を評価することで、現行の試験では合格していなくても、入学して頑張れる子はいるのではないか」と語った。

     また、同大などが入試で主体性などを評価するため文科省の委託を受けて開発した高大接続ポータルサイト「JAPAN e-ポートフォリオ」を紹介。e-ポートフォリオは、日々の学習や活動の記録をデータ化し、学生や教員で共有するシステムで「自らの振り返りや気づきが記録できる。大学も成績だけを評価するのではなく、失敗からどのようなことを学んだのか、3年間でどう成長したのかという過程を評価することができる」と期待した。

    順天中学・高校の長塚篤夫氏

    生徒、教師が基準共有

     高校現場を代表し講演した元高大接続システム改革会議委員で順天中学・高校長の長塚篤夫氏は、主体性の評価を調査書にどう記載できるのかなど、今後の大学入試の課題などについて語った。「目標とする資質能力の達成度合いを示した評価基準『ルーブリック』を高校が作り、生徒と先生で共有することが重要で、これが評価の基礎になる」と指摘。「調査票は1枚という制限がなくなり何枚書いてもよくなる。どういう能力がついたかを評価軸によって書かないといけない」と解説した。

     さらに「一般、AO、推薦の三つの試験は度合いは異なるが知識や主体性を評価する同じものになる。成績順に準拠した選抜ではなくて、多様な学生を大学が主体的に責任を持って入学させることができれば、より良い入試になる」と話した。

    多様さ認める選抜を

     その後、山田氏、尾木氏、長塚氏に石原賢一・駿台教育研究所進学情報事業部長を加えた4人がパネルディスカッションした。コーディネーターは安田賢治・大学通信常務が務めた。

     石原氏は予備校側の立場から「若者が自分がやりたいことをできる自分に合った大学に入れるのは間違っていない」とした上で「一方で、英語が得意で数学、理科は苦手という生徒がいるように、無口で部活をしていない成績上位の生徒もいる。みんながプレゼンテーションがうまい前向きなスーパースターではなく、多様な子が入れる入試が残るのが健全だろう」と指摘した。これに対し尾木氏は「主体性というのはむしろ学びに向かう力だ。コツコツと研究する人材がほしいということであれば建学の精神に立ち返って、アドミッションポリシーを打ち出せる。そういう意味で多様になると思っている」と話した。

     今年度、実証段階に入るe-ポートフォリオには国公私立大・短大の計84校が参加。尾木氏は「入試に使うのは10校前後。探究活動、留学経験、部活動など入試に使う項目を大学側が決められる。生徒の情報はあくまでも自分自身が情報を切り取って、志望する大学に送ることになる」と説明。e-ポートフォリオは生徒自身が記入するので、教員の手間が増えるとの指摘もあるが、尾木氏は「1年生から完璧なものが書けなくても成長が見える。大学もそういう点を踏まえて評価しないと、対策を取らなければいけなくなってしまう」と述べた。

     山田氏は「各大学が今の入試で本当にほしい生徒を選べているのか見直してもらうチャンスだ」と強調した。長塚氏は「ボランティアの校外活動など何かをしたら『主体性』というわけではなく、ルーブリックのような評価体系を大学も作ってほしい」と要望。「この入試の方がいいと大学が認識するかどうかにかかっている。受験料で運営費をまかなおうという発想では今の入試から抜けられないだろう」と話した。


    ことば

     ●高大接続ポータルサイト「JAPAN e-ポートフォリオ」

     文部科学省の大学入学者選抜改革推進委託事業(主体性等分野)で作った「高校eポートフォリオ・大学出願ポータルサイト」。2017年10月に運営が始まった。高校生が学校行事や資格など学校内外の活動を記録し、希望する大学が蓄積したデータを入試に活用する。高校の教員は記録を閲覧でき、指導に役立てることもできる。16年度からの事業で、今年度から実証段階に入る。

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