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即位直前の新元号公表 根拠の提示が不十分だ

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 政府は来年5月1日の新天皇即位に伴う新元号の公表時期について、同日の改元の1カ月前を想定して準備する方針を固めた。

 当初は改元による国民生活への影響を小さくするため、今年夏ごろの公表を検討していたが、大幅に遅れることになった。どうして改元直前の時期になったのか。根拠の説明が不十分だ。

 政府の説明によると、改元の1カ月前と想定したのは、各省庁が管理する個別の情報システムを新元号に合わせて改修するのに1カ月程度で対応できると判断したからだという。西暦で管理しているケースが多いためだ。

 しかし、省庁同士や、省庁と民間の金融機関などとのシステムで元号を使っている場合には、さらに時間がかかる。このため、改元以降も一定期間、「平成」も使えるよう調整するという。改元後、新元号と古い元号がシステム上に混在し、混乱が生じるおそれもある。

 公表時期が大きくずれ込んだ背景には、来年2月24日に政府が計画する天皇陛下の在位30年の祝賀行事がある。安倍晋三首相の支持層である保守派は、これより前に新元号が公表されれば国民の関心が新天皇に向かい、陛下と新天皇の「二重権威」が生まれると懸念している。

 だが、これが公表を大幅に遅らせる強い理由と言えるのか。

 新元号が仮に祝賀行事の直後に公表されたとしても、改元まで約2カ月しかない。今回の改元は陛下の退位によるもので、事前の準備ができる利点がある。これを生かさずに国民の理解を得るのは難しい。

 そもそも国民生活への影響が大きい元号の公表時期を、時の政権の一存で決めていいのか。政府に審議会などを設置し、開かれた議論をすることが必要だろう。

 今回は元号の公表時期を政府が決める初のケースとなる。将来への前例にもなる以上、政権の独断ではなく、なぜこの時期にしたのか、国民が納得できる根拠を示すことが求められている。

 安倍首相は新元号について「広く国民に受け入れられ、日本人の生活の中に深く根ざすものとしていきたい」と述べている。公表時期も国民本位で考えるのは当然のことだ。

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