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華恵の本と私の物語

/22 トモ、ぼくは元気です

 小学校しょうがっこうかえみち。「はなえちゃん、いっしょにかえろ」とうしろからこえた。このたどたどしいはなかたは……くと、やっぱり新木あらきくんだ。

     先週せんしゅうの「ひまわり学級がっきゅうのみなさんとのふれあい」で、はじめて新木あらきくんとはなした。新木あらきくんは6年生ねんせい。わたしよりふたつも年上としうえなのに、あかちゃんみたいに、はしゃいだりいたりする。同級生どうきゅうせいたちは、こっそりわらったり、気持きもわるいとったりしていた。わたしは、新木あらきくんをはじめ、ひまわり学級がっきゅうのみんなには、できるだけ普通ふつうせっした。

     そのから、新木あらきくんは校庭こうていでわたしをかけるたびにニコニコわらいかけてくるようになった。

     そして今日きょうかえみちこえをかけられたのだ。

     新木あらきくんはからだ左右さゆうにゆらしながら、わたしのななうしろをついてくる。

     「はなえちゃん、ぼくはきみを、まもるよ」

     新木あらきくんがわたしにった。

     「え?」

     おもわずまりそうになった。でも、速足はやあしあるつづける。

     「大雨おおあめがふったら、おおきなふねで、げよう。ふねは牛乳ぎゅうにゅうパックでぼくがつくるよ。はなえちゃんのために、つくるよ。だから、ふたりでげよう。ぼくがまもるからね」

     やめて!とさけびたかった。ずかしい。こんなところ、だれにもられたくない。ひまわり学級がっきゅうからこんなことをわれるなんて……。

     わたしは「うん」とちいさいこえいながら、ただひたすら、いそいであるいた。

     新木あらきくんはそれきり、わたしにこえをかけてくることはなかった。あのときのわたしの気持きもちは、新木あらきくんにつたわっていたのだろう。こえをかけられないことに、安心感あんしんかんおぼえながらも、こころのどこかに、罪悪感ざいあくかんのこった。

      + + + + 

     『トモ、ぼくは元気げんきです』の主人公しゅじんこう、カズキは、おにいちゃんのトモがいつもいたずらをされているのをています。なにもできない自分じぶんいやで、「障害児しょうがいじおとうと」とわれることにもつかれ、いえで、ある事件じけんこしてしまいます。でも、夏休なつやすみにおばあちゃんのいえって、カズキはわるのです。

     「みんなはトモのことを『あたまのなかはからっぽ』とおもっているみたいだけど、トモのあたまのなかにはたくさんの記憶きおく気持きもちがまっている」

     カズキのこのことばで、新木あらきくんのことをおもしました。

     新木あらきくん。

     あのときはごめん。

     あのときはありがとう。

     どちらもくちしてみても、しっくりこない……。

     でも、いまでも、そしてきっとこれからも、わたしは新木あらきくんのことを、ずっとわすれないのです。


    『トモ、ぼくは元気げんきです』

    香坂直こうさかなおちょ

    講談社こうだんしゃ 1404えん


     エッセイストの華恵はなえさんが、ほんにまつわるおもきなほん紹介しょうかいします

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