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アートの扉

風間サチコ ディスリンピック2680 社会の狂気照らす

 牧歌的な丸木美術館の展示室に入ると、巨大な黒と白の世界が目に飛び込んでくる。木版画で現代社会のゆがみを描いてきた作家が、優生思想から着想を得たのが本作だ。

     架空の都市で、近い未来に開催される五輪「ディスリンピック2680」の開幕式典。スタジアムの中央にそびえる祭壇のような場所では、各層でウサギ跳びやブリッジをする人が描かれ、頂には人力で支える巨大な日の丸が翻る。

     狂気に満ちた世界の細部は戯画的だ。建設途中であり、廃虚でもあるような右側のスタンド。ポンプ車から流し込まれるコンクリートに埋もれるのは、「甲乙丙丁」のうち丁や丙の人間。左画面では、シャベルをかつぐ人たちが行進する。都市の明日はどこへ向かうのか。左下にある大砲が示すのは、間もなく訪れる破滅だ。

     旧優生保護法下で強制的に行われた不妊手術が注目を集めている。風間サチコさんは「初めて聞いた時のショッキングな気持ち、国家設計の下非人道的な行為が行われたことへの憤りをストレートに出したかった」と話す。ナチス・ドイツの党大会を撮影した記録映画やファシズムの思想を調べ、左右対称性やローマ遺跡の要素を盛り込んだ。学徒出陣や五輪、日本の姿を照らし出す。

     大きな画面は版木計28枚から成る。55日間かけて彫刻刀で彫り進め、学生時代から使っているというバレンで刷り上げた。展覧会開会前日、風間さんの右手首には黒いサポーターが巻かれていた。けんしょう炎になったそうだ。「そこまでしないと人をぎょっとさせるものは作れない」と信じている。同じ建物にある丸木位里・俊夫妻の「原爆の図」と渡り合う大作だ。【高橋咲子】


     ◆プロフィル

    かざま・さちこ

     1972年、東京都生まれ。黒一色を用いながら、濃淡を駆使して多彩な表現を試み、彫刻刀によるシャープな描線できわどいテーマを巧みに描いている。ヨコハマトリエンナーレ2017などに参加。


     ◆インフォメーション

    風間サチコ展「ディスリンピア2680」

     7月8日まで。月曜休館。埼玉県東松山市下唐子の原爆の図丸木美術館(0493・22・3266)。

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