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文芸ジャーナリスト・酒井佐忠さんの「詩」に関するコラム。

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新たな「万太郎論」=酒井佐忠

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 <湯豆腐やいのちのはてのうすあかり>などの句でよく知られる久保田万太郎。戯曲作家、小説家として著名な万太郎の俳句が持つ不思議な魅力に挑戦した著書が出た。若手俳人として活躍中の高柳克弘の『どれがほんと? 万太郎俳句の虚と実』(慶應義塾大学出版会)である。たとえば「下町の抒情俳人」などと安易なレッテルを貼られた万太郎の句に、現在にも通じるモダンな感覚を見出(みいだ)す興味深い論だ。

 <時計屋の時計春の夜どれがほんと>。この句の舞台は下町の老舗の時計屋では決してない。何かタイムマシンの実験室を描いた映画のシーンとも読める。万太郎はこの句で何を描こうとしたのか。著者はそれを季語論や定型論、さらには文語・口語の問題などを駆使して本質に迫ろうとしている。「どれがほんと」「なにがうそ」との虚実の間の問いかけに俳人は、何を託していたのだろうか。

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