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読書日記

著者のことば 山尾悠子さん 不燃性という幻想世界

山尾悠子さん=内藤麻里子撮影

 ■飛ぶ孔雀 山尾悠子(やまお・ゆうこ)さん 文芸春秋・2160円

     若くして幻想文学の旗手とうたわれた知る人ぞ知る作家の、8年ぶりとなる連作長編小説。曖昧なイメージの上に徐々にピースが積み重なり、大きな物語世界が築かれていく過程は読んでいて快感だ。

     「1 飛ぶ孔雀(くじゃく)」「2 不燃性について」の2部構成。ここは火が燃えにくくなった世界。そんななか1部は、夏の庭園で娘2人による火を運ぶ儀式が行われる。さまざまな人物が出くわしたもの、耳にした言葉が散発的に記され始める。「前編の1部は、徹底して日本のイメージでいった。原風景、子どもの頃の記憶、育った岡山の土地や関西方面で目に触れたあれこれの断片が入っています」

     2部は地下世界をさまよっていた男が山頂へ向かう。「完全に架空の世界にする予定が、そこまではいかなかった」。1部と同じ名の人物も登場するが、「つじつまがあったりすることは何もない」とほほ笑む。それでいて、2部の終わりと1部の冒頭がつながる円環構造が妙に納得できる。

     火が燃えにくい「不燃性」は、掌編「向日性について」(2010年「歪(ゆが)み真珠」所収)▽同「親水性について」(17年、文学ムック「たべるのがおそい」所収)と共に3本シリーズ。「何となくこの三つセットでないといけない」

     こういう世界観を散文詩と見まがう文章でつづる。詩との違いをこんなふうに語る。「以前歌集を出したのですが、短歌は凝縮する作業。書くものが短くなってしまう。小説を書く邪魔になる」。精緻な世界を確信をもって書き続ける。「読んで楽しい、感激する小説とは違うので、手を出しにくい雰囲気の漂う装丁を頼んだ」と言うから振るっている。

     同志社大在学中の1975年「SFマガジン」誌上でデビュー。20代後半まで「一つのイメージに正しい磁力が発生すると、磁石に吸い付く砂鉄のように言葉が付着してきた」と言い、そんな集中状態を「空中浮遊していた」と語る。結婚と共にその状態を抜け、子育てなどに追われ寡作に。ところが今年はもう1冊出そう。「長年の担当編集者が定年を迎えるので、何が何でも次の書き下ろしを出さないと」とのことである。<文と写真・内藤麻里子>

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