メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

沖縄防衛局

職員が「軍用地投資を」 無許可出版、懲戒へ

 防衛省沖縄防衛局の40代の男性職員が今年4月、在沖縄米軍の基地内の土地(軍用地)への投資を指南する単行本を、同省に無許可で出版していた。職員自身も米軍嘉手納基地(沖縄県嘉手納町など)の軍用地を購入し、日本政府から年間60万円以上の借地料(軍用地料)を得ていた。職務で知った情報を参考にした可能性もある。不動産賃貸などの副業をしていたことも判明し、防衛省は近くこの職員を懲戒処分する方針だ。

 男性職員は4月24日に「お金持ちはこっそり始めている 本当は教えたくない!『軍用地投資』入門」(すばる舎)を出版した。軍用地の購入を「究極のローリスク・ミドルリターンの投資だ」とうたい、「借地料は毎年値上がりし、景気に左右されにくい」「国が借地料を支払うため滞納の心配がなく、安定的で長期的な収入が見込める」などとメリットを説明。「着実にお金を生み出してくれる『おいしい果実』なのです」と県外の人にも購入を勧めていた。

 職員はこの著書でペンネームを使った上で自ら沖縄防衛局職員だと明かしたが、職務に関する書籍の出版時に必要な防衛省への届け出をしていなかった。インターネット上で販売に気づいた同省が調査して発覚した。

 職員は著書で「現在の職務は直接軍用地に関するものではなく、国家公務員倫理法に抵触しない範囲で執筆」としていたが、軍用地管理を担当した経験があり、同省は届け出が必要なケースだったと判断した。職員は出版社を通じて「現時点では取材を一切受けられない」と回答した。

 著書などによると、男性は沖縄県出身で、一般職員として沖縄防衛局で採用された。2007年に嘉手納基地の土地約560平方メートルを購入し、年60万円前後の収入を得るなど、複数の軍用地を所有していた。14年にネット上に開設したブログで軍用地売却時の節税対策なども指南。著書で「最大のリスクは『基地返還』」とし、嘉手納で購入したのは「戦略上重要な基地で返還されにくいと思った」と説明していた。

 防衛省職員による軍用地の購入自体は違法ではなく、相続などで所有している職員も複数いる。ただ、職務で基地関連の情報を得やすい防衛局職員が新たに軍用地を購入するのは、地主団体と防衛局との借地料交渉や米軍基地返還交渉に携わった場合に中立性に疑義が生じかねず、「倫理的に問題」(防衛省幹部)との指摘がある。

 男性は中古マンションなどを保有し、不動産賃貸業も手がけていた。同省は自衛隊法の兼業禁止規定に抵触する可能性もあるとみている。【秋山信一、比嘉洋、宮城裕也】

在日米軍の軍用地

 日米安全保障条約や日米地位協定に基づき、日本政府が在日米軍基地の土地として無償で提供している。政府は民間地主(約5万人)や自治体から20年契約で借り、借地料は毎年度交渉で改定。防衛省によると、2016年度は全国で計約966億円を支払った。軍用地の売買に制限はない。自衛隊との共用などを除く米軍専用施設の面積は全国で約263平方キロ、うち沖縄県内が約7割の約185平方キロを占める。

沖縄では軍用地が一つの「金融商品」

 沖縄で軍用地が一つの「金融商品」となっているのは確かだ。街角や地元紙には「軍用地、買います・売ります」などの広告が載り、地元銀行には「軍用地ローン」もある。

 「軍用地を売る相談は月に1回あるかどうかだが、買い求める相談は1日5件ほどある。売りに出されればすぐに買い手が見つかる」。軍用地の売買を手がける那覇市の不動産業者は人気ぶりを説明する。特に米軍嘉手納基地の滑走路など返還の見通しが低い土地ほど人気が高いという。

 沖縄の軍用地は、太平洋戦争末期の沖縄戦中や戦後に米軍が強制的に住民の土地を奪って基地を建設したため、民間人や自治体の所有地の割合が約77%と高い。防衛省は日米安全保障条約などに基づいて地主と賃貸借契約を結び、借地料を支払っている。県によると、2016年度は約4万3000人に計858億円が支払われた。

 借地料について、防衛省は周辺地価などを勘案して「適正に算定している」と説明。だが、安定的に基地用地を確保する必要上、地主側の求めに応じて1972年の本土復帰以降、ほぼ一貫して値上げを続けている。一方、県軍用地等地主会連合会の関係者によると、既存の地主が投資目的で新たに軍用地を買い求める事例は少ないという。【比嘉洋】

軍用地主などから疑問の声

 軍用地の賃貸借契約や管理を担う防衛局の職員が基地を「金融商品」と見なしていると受け取られかねない内容に、軍用地主などから疑問の声が上がる。

 2025年度以降の全面返還が予定される米軍牧港補給地区(浦添市)に土地を所有する宮城政司さん(48)は「投資目的で地権者が増えれば、返還後の跡地利用の合意形成に余計に時間がかかる」と反発。「返還されて跡地利用が進めば税収が増えると期待しているのに、防衛省の職員が『返還はリスク』と捉えるのはいかがなものか」と憤った。

 米軍嘉手納基地(嘉手納町など)に土地を持つが、基地の存続に反対して防衛省との契約を拒み続けている沖縄市の真栄城玄徳さん(75)は「沖縄県民は戦後73年間、ずっと『いつか古里に帰りたい』と基地を見つめてきた。我々の古里である軍用地で金もうけを勧める発想が理解できない」とあきれた様子だった。【宮城裕也】

毎日新聞のアカウント

話題の記事

アクセスランキング

毎時01分更新

  1. 焦点・働き方改革 首都圏・総合病院の医師悲痛 当直明けも分刻み 「長時間労働、野放し状態」
  2. 将棋 藤井七段、王座戦タイトル初挑戦まであと2勝
  3. 「18歳成人」に思う 性別変更、慎重に判断して タレント・KABA.ちゃん(49)
  4. 殺人 自殺装い弟殺害容疑 多額の保険、姉逮捕 堺
  5. クローズアップ2018 違法塀「人災」濃厚 認識に甘さ、命守れず

編集部のオススメ記事

のマークについて

毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]