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社説

著作物のネット利用拡大 権利保護とのバランスを

 著作物をインターネット上でより円滑に利用できるようにする、改正著作権法が成立した。

     書籍や論文、新聞記事、写真といった他人の著作物を利用する場合は著作権保護のため、原則として著作権者の許諾が必要だ。

     改正で、著作物を鑑賞する目的でない、人工知能(AI)の深層学習などは、著作権者の許諾がなくても著作物が利用できるようになる。

     また、事業者が許諾なしに書籍の全文を電子データとして蓄積し、特定のキーワードを含む書籍をネットで検索できるサービスが可能になる。目当ての書籍を探しやすくなる。

     デジタル化、ネットワーク化が進展する中、情報処理技術を用いて新たな産業を創出しやすい環境を整備するのが狙いだ。

     モデルとなったのが、1976年に米著作権法で成文化された「公正な利用(フェアユース)」規定だ。批評や解説、報道などを目的とした公正な使用は、一定の条件を満たせば著作権侵害にはならない。しかし、「公正」の判断基準は明確ではなく、意見が食い違った場合は、裁判で争われてきた。

     日本でも、10年ほど前からネット関連業界を中心に「フェアユース」導入の要望が高まった。それに対し、権利者団体である日本新聞協会や日本書籍出版協会などは、著作権保護の観点から懸念を表明。文化審議会で望ましい形が検討されてきた。

     著作物を使って、新しい知見がもたらされることには社会的意義がある。生活にもたらされる恩恵も小さくないだろう。

     一方で、権利者に不利益が生じる懸念があるのも事実だ。

     検索サービスでも、検索結果は不利益を小さくするため「軽微なもの」とされ、著作物の一部分の表示に限定される。

     とはいえ、「軽微」といった抽象的な要件ではとらえ方もあいまいになる。知識や理解の不足により権利が不当に侵害されかねない。

     こうむる不利益が大きくなれば、制作意欲をそがれ、著作物の再生産にも影響を及ぼす恐れがある。著作権に対する人々の理解を深めることも大事だ。

     利便性と権利保護のバランスに配慮した、適正な運用を望みたい。

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