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堀江敏幸・評 『火ノ刺繍』=吉増剛造・著

 (響文社・6264円)

 書物というより、文字と声の構造体と呼んだ方がいいだろうか。二〇〇八年から二〇一七年までの仕事を時系列に収めた吉増剛造『火ノ刺繍(ししゅう)』は、一二〇〇頁を超える大著である。追悼、対話、鼎談(ていだん)、書評、選評、講演録、日録、ポートレイト。さまざまな位相の言葉が交錯し、反響するにぎわしい空間をさまよっているうち、奇妙なことに、音がしだいに静まって、全体が一枚の巻物のように見えてくる。

 豊かな紙の平面を、この世のものならぬ声の風が通り過ぎる。詩人はどうやらその風に乗ってではなく、風を抱えて歩いているらしい。しっかり地面を捉えているのに、立ち姿に重さが感じられないのはそのせいだ。時折、小さな突起にぶつかって立ち止まる。静止はひとつの出会いであり、すでにこの世から去った者たちとの再会である。

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