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村上陽一郎・評 『明治の光・内村鑑三』=新保祐司・著

 (藤原書店・3888円)

存在は一つの社会的事件

 内村鑑三と言えば、中学や高校でも、ときに明治二十四年に起きた「不敬事件」の主人公としてその名に言及されることがある。当時第一高等中学校教諭(嘱託)だった内村だが、前年教育勅語が公表され、翌年正月その奉読式が学校で挙行された際、内村が最敬礼を怠った(拝礼を完全に拒否したわけではない)として、教員や生徒から糾弾され、社会問題化した事件である。非国民という激しい非難を浴び、結局は教諭職を解任されることになったが、キリスト教徒としての立場と、皇室に対する尊崇の立場との問題として、その後の信仰者にも大きな影響を与えた。しかし、彼の生涯を規定する表現としてよく「二つの<J>」つまり<Jesus>と<Japan>とが挙げられるように、彼は非常なる「愛国者」でもあった。本書中にも「武士道の上に接ぎ木されたる基督(キリスト)教」というような表現がしばしば引用され、あるいは内村の言葉「日本人を通うして顕(あら)はれたる基督教、それが日本的基督教である」などにも、そのことははっきりしている。そして、彼のカリスマ的な人間性は、通常「無教会主義」と呼ばれる独自のキリスト教信仰と相まって、周囲の人々や後世に巨大な影響を残したのである。

 著者にはすでに『内村鑑三』(構想社、一九九〇年、文春学藝ライブラリーに文庫版あり)という本があって…

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