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幸せの学び

<その191> 校長先生、がんになる=城島徹

新刊を手にする小林豊茂校長

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 「肺腺がん、それもステージ4です」。東京都豊島区立明豊中学校の小林豊茂校長(56)は2016年8月、突然のがん告知を受けた。だが、絶望せずに誓った。「生徒の前に戻ってこよう」。抗がん剤の影響で髪は抜け落ちたが、3カ月の闘病を経て職場復帰すると、全校集会でニット帽を外して「生きるための智慧(ちえ)」を語り始めた。

 がん宣告の4カ月前に開催したセミナー「主権者教育とNIE」を企画した私は小林さんに「新聞活用と模擬投票」のテーマで講演をお願いした。全国新聞教育研究協議会の会長も務める新聞活用授業のベテランだからだ。

明豊中では「定期試験の日程を2日にするか3日にするか」を生徒自身が決める投票を校長の主導で行われたばかりで、生徒の主体性を育む実践の解説もリクエストした。18歳選挙権実施を控え、「他の学校でもヒントになるに違いない」と期待したからだ。

 ところが、「小林さんががんで学校を休んでいる」という声がほどなく耳に入った。「働き盛りに末期がん告知とは……」。暗然たる気持ちになったが、 当人は「私の心は阿修羅のような闘志でメラメラと燃え盛っていた」と述懐する。

 担当医に「私を応援して最高の治療をしてください。私は先生にかけています」と宣言すると、その強い意志に看護師は感極まって「一緒に頑張りましょうね」と涙したという。

 2学期の始業式に出席した翌日から入院。放射線治療と抗がん剤治療を受けながらも、「がん細胞よ、覚悟しておけよ!」と踏ん張った。高校の同級生だった栗山英樹監督率いる日本ファムファイターズが日本一に輝くと、「私も生き抜くぞ」とこぶしを握った。

 頭髪が抜け、足に激痛が襲う副作用もあったが、腫瘍は驚くほど縮小した。2017年3月、「がん教育」の特別授業に明豊中を訪れた東京女子医科大学がんセンター長の林和彦医師と共闘で意気投合した。スーツ姿にニット帽で現れた小林校長の「がん患者として勇気と希望を持って堂々と生きる姿」に林医師が心を激しく揺さぶられたのだ。

 がんとの闘いは今も続くが、被災地の視察や北陸への修学旅行にも出かけた。「負けない心」の記録と林医師との対談を収録した新刊「校長先生、がんになる」を今春出した。

 「私は、これからも校長として、生徒が喜び輝く学校づくりを、ますます本気でやっていきたいと決意を新たにしています」「教員人生の総仕上げへ向けて、私の心は情熱で燃え盛っています」--。力に満ちた言葉がそこにはつづられている。【城島徹】

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