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ぐるっと東北・母校をたずねる

県立安積高/1 多感な時代に興味追求 作家・玄侑宗久さん /福島

作家・玄侑宗久さん=88期生(1974年度卒)

 「母校をたずねる」は、県立安積(あさか)高校(郡山市開成5)編をお届けします。「安高(あんこう)」の愛称で親しまれ、開拓者精神と質実剛健、文武両道を掲げる伝統校です。初回は88期生の作家、玄侑宗久さん(61)=1974年度卒=です。文学や宗教への関心の一方で、剣道にも打ち込んだ多感な高校時代を振り返ります。【笹子靖】

     安高に入って最初に感動したのは、上級生の男声合唱で応援歌「紫の旗ゆく所」を聴いた時です。実に荘厳で、後にお経を聴いた時に味わった「胴震い」を感じました。

     夏は自転車通学でした。三春町の自宅から郡山まで下り坂が多く、行きは1時間もかかりませんが、帰りは倍以上かかりました。部活は剣道部です。練習は毎日ですが、試験で100番以内にいなければ練習できない、というのが部の方針でした。練習はダラダラやらず、防具をつける前に素振り1000本。その後の掛かり稽古(げいこ)なども短時間で集中しました。合宿で闇鍋を囲んだのは、いい思い出です。

     高校時代のもう一つの柱が文学でした。中学後半から宮沢賢治や太宰治などを読みふけりました。安高では童話研究会の活動をしながら、ものを書いていました。通学途中に立ち読みする古本屋のご主人が「君にはこれがいいんじゃないか」と本を薦めてくれました。フォークナーとか開高健、高橋和巳もあったかな。ああいう強引な本屋さんは、今はありません。

     当時は吉行淳之介や野坂昭如、カミュやグレアム・グリーンなどをほとんど読み、詩も読みました。ものを書く友達との付き合いがあり、240枚の力作を読ませてもらったことがあります。面白かったですね。文学好き、映画好きの友達に随分刺激されました。

     父は三春町にある福聚寺(ふくじゅうじ)の住職でしたが、継ぐことには反発しました。親からは言われませんでしたが、「継ぐのが当たり前」と周囲は見ていると思っていました。ほかの宗教も知りたくて、新興宗教も含め勉強に出かけました。初めは反発からですが、書くことと同時に宗教への興味もあったと思います。そうした漠然とした興味が一つに絞りきれず、どちらもやるしかないと思ったから、先に僧侶になりました。文学でも宗教を書きたかったので、それなら経験した方がいいと思ったのです。

     関心、興味があちこちにあり、どうやってまとめるかが私の20代にかけてのテーマでした。このまま、まとまらないと地獄だな、という感じです。いろいろな仕事を経験したのも、そういう世界を見てみたかったからです。それは宗教でも文学でもプラスに働き、最終的に落ち着きどころは得たと思っています。

     安高の伝統は「真の教養」だと思います。言葉を変えると「ゼネラル」です。今の時代は先端化した情報に振り回され、ゼネラルであることがとても難しい。仕事やお金にすぐに結びつく技術ではなく、自分の内側の欲求はもっと広いものです。それを満たすための人生は、高校生ぐらいから始まるのではないでしょうか。外側の情報を遮断し、いろいろなことを学べる恵まれた時期です。それをぜひ活用してほしいですね。

    創立5年後、福島から移転

     安積高校の前身、福島中学校は1884(明治17)年、福島町(現福島市)にあった福島師範学校の校舎で授業を始めた。生徒は31人だったという。2年後、近くに新校舎が完成したが、まもなく県議会が安積郡桑野村(現郡山市)への移転を決議した。

     安積地方は県の要に位置し、明治新政府が進めた安積疏水(そすい)開墾による農地拡大と、士族らの入植で勢いがあった。将来の人材育成の場として期待されたことが移転の背景にあった。

     現存する木造2階建て洋風建築の新校舎本館(旧福島県尋常中学校本館)は1977年、国の重要文化財に指定された。明治初期の洋風建築を代表するバルコニー式玄関を構え、ルネサンス様式の豪壮な外観は、地元の人から「桑野御殿」ともいわれた。

     1889(明治22)年3月の移転の際、福島町から徒歩で荷物を運ぶ職員や生徒がいた。その姿に驚いた沿道の村民が「若い兵隊さんが通る」と言って、日の丸を振って見送ったという話が伝わる。

     1901(明治34)年に県立安積中に改称され、戦後の新学制で1948年に安積高となった。2001年に男女共学となり、現在は3学年各8クラス、計950人余りが学んでいる。(毎週金曜日掲載)


    卒業生「私の思い出」募集

     県立安積高卒業生のみなさんの「私の思い出」を募集します。300字程度で、学校生活や恩師、友人との思い出、またその後の人生に与えた影響などをお書きください。卒業年度、氏名、年齢、職業、住所、電話番号、あればメールアドレスを明記のうえ、〒100-8051、毎日新聞地方部首都圏版「母校」係(住所不要)へ。メールの場合はshuto@mainichi.co.jpへ。いただいた「思い出」は、紙面や毎日新聞ニュースサイトで紹介することがあります。


     ■人物略歴

    げんゆう・そうきゅう

     1956年、三春町生まれ。慶応大文学部中国文学科卒。さまざまな職業を経験した後、京都・天龍寺専門道場に入門。2001年に「中陰の花」で第125回芥川賞を受けた。その後の作品に「アブラクサスの祭」「アミターバ 無量光明」「光の山」など多数。近刊に「竹林精舎」。08年から臨済宗妙心寺派の福聚寺(ふくじゅうじ)住職。

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