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森友問題

佐川氏ら不起訴 「忖度」疑惑、未解明のまま

参院予算委員会での証人喚問で、民進党の小川敏夫氏の質問に答える佐川宣寿前国税庁長官=国会内で2018年3月27日、和田大典撮影
森友学園を巡る問題の経緯

 学校法人「森友学園」を巡る一連の問題で、大阪地検特捜部は、前国税庁長官の佐川宣寿氏(60)や財務省職員らを不起訴処分にした。問題の発覚から1年4カ月。検察の捜査は終わったが、国有地の大幅な値引きや決裁文書改ざんの背景に、安倍晋三首相らへの忖度(そんたく)があったかどうかなど、多くの疑惑は未解明のままだ。財務省は佐川氏らを処分し、幕引きを図る構えだが、与党からも麻生太郎財務相への責任追及の声が上がる。

真相、どれだけ迫れたか

 一連の問題の根幹は、異例ずくめの取引の経緯だ。国有地は当初の貸し付け契約から売却に変更。最終的に8億円も値引きされ、学園が建設を計画する小学校の名誉校長だった昭恵氏の影響が国会などで追及された。

 値引きの根拠は国有地の地中のごみの撤去費だが、学園との売却交渉を担った財務省近畿財務局が、費用を積算する国土交通省大阪航空局に対し、撤去費の増額を要求していたことが明らかになっている。学園側は当初から、交渉で購入費の上限を1億6000万円と主張。結局、土地の鑑定価格から、1億5000万円が増額された撤去費8億円が差し引かれ、上限価格を下回った経緯がある。

 結論ありきの異常な取引にもみえるが、大阪大大学院の品田智史准教授(刑法)は、学園側がごみ処理による開校の遅れを理由に、訴訟をちらつかせていたことに着目する。「訴訟リスクを避けるための値引きには一定の合理性があると、裁判で判断されて無罪になる可能性を、検察は懸念したのではないか」と推測する。

 背任罪の成立には損害が発生したことの立証も不可欠で、値引きが過大だったとの証明には、ごみの量を裏付ける客観的な証拠が必要になる。元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士は「詳細なごみの量は実際に掘り返さないと分からない。校舎が残っている現状では難しく、当初から立件のハードルは高かった」と指摘する。

 特捜部は今回、財務省職員らが保身などのために値下げをしたとまではいえないと判断し、背任容疑での立件を見送った。ある捜査幹部は、不起訴処分が国民の理解を得難いとした上で、「財務省の対応が非難される理由がなかったわけではない。そのレベルが犯罪のレベルなのかということにつきる」と語った。

 ただ、積算時の調査でごみの量をしっかり確認しなかったり、大阪航空局が増額要請をなぜ容易に受けたりしたのかなどの疑惑については、未解明のまま捜査は幕引きした。

 検察関係者によると、1年以上にわたる捜査では、むしろ学園との交渉記録の取り扱いが課題になったという。保存期間が1年未満であることもあり、佐川氏ら責任者が、必要がなくなり「廃棄した」と言えば、公文書ではなく職員の手控えの扱いになる。公用文書毀棄(きき)罪は、公文書としての使用目的を持って保管されているものを捨てることで成立し、手控えには適用されない。

 特捜部は応援検事を集めて立件に向けて長期間検討したが、「廃棄した」との発言に加え、保存期間の問題から起訴は不可能だと判断したとみられる。

 山本真千子・特捜部長は今回、1時間半にわたって捜査結果を説明した。不起訴処分の事件としては異例だが、動機や指示系統など詳細については明かさなかった。元裁判官の門野博弁護士は「学園と関わった政治家や昭恵氏らの影響も含め、検察がどれだけ真相に迫れたかは極めて疑問だ」と指摘。「強制捜査に踏み切り、徹底して証拠を集めるべきだった。このままでは、検察が政治に忖度(そんたく)しているのではという疑いを生む」と批判する。【宮嶋梓帆、遠藤浩二】

衆院本会議に臨む麻生太郎財務相=国会内で2018年5月31日、川田雅浩撮影

麻生氏、責任をどうとるか

 「極めて由々しきこと。関与した職員への処分を含めて(省内調査の結果を)週明け早々にとりまとめる」。森友学園問題で大阪地検が財務省関係者を不起訴とした31日、麻生太郎財務相は成田空港で用意したコメントを淡々と読み上げた。これまで「書き換え」と表現してきた同省の不正行為を「改ざん」とようやく明言したが、報道陣からの質問には一切答えず、主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議に出席するためカナダに旅立った。

 財務省は、麻生氏の帰国直後の4日にも調査結果と関係者の処分を発表する方針。麻生氏は「再発防止と信頼回復に努めたい」と述べ、財務相を続投する意思を改めて示したが、虚偽答弁などで国会を欺いた森友問題に加え、前事務次官のセクハラ問題など不祥事が相次ぐ中、今後は麻生氏が自らの責任をどう取るかが焦点となりそうだ。

 また、大阪地検が前理財局長の佐川宣寿前国税庁長官らを不起訴としたため、決裁文書の改ざんや森友側との交渉記録の廃棄を進めた経緯などの解明は、財務省の調査に委ねられる形となった。麻生氏や財務省には4日にも公表する調査結果と省内処分で問題の幕引きを図りたい思惑もうかがえるが、国民の理解が得られるかはわからない。

 関係者によると、近畿財務局の複数の職員は、調査に対し、改ざんなどは「佐川氏から指示された」と証言しているという。佐川氏自身は指示したことを明確に認めていない模様だが、財務省は調査結果で「職員側は佐川氏の指示と受け止めた」として、佐川氏が改ざんや交渉記録の廃棄を主導したことを事実上、認定する方針だ。ただ、処分は、佐川氏らが不起訴となったことを踏まえ、懲戒処分のうち最も重い「免職」を見送り、「停職」にとどめる見通し。すでに退職している佐川氏は停職期間に相当する給与分を退職金から減額される見込みだが、世論の理解が得られるかどうかは分からない。

 麻生氏に関して、菅義偉官房長官は31日の記者会見で「国民の厳しい目を真摯(しんし)に受け止め、再発防止に努めていただきたい」と擁護。自民党の二階俊博幹事長も「麻生氏の責任なんて考えたことはない」と、引責辞任論の打ち消しに躍起だ。政権幹部が辞任論を否定するのは、安倍内閣の支持率が低迷する中、屋台骨を支える麻生氏を失えば政権運営が一層不安定化しかねないためだ。

 ただ、麻生氏が改ざん問題などを巡り、失言を繰り返したことが世論の批判を増幅しており、自民党内でも「常識的には辞めないのはおかしい」(中堅議員)との不満がくすぶる。公明党の山口那津男代表も記者団に対し、麻生氏について「政治家としての責任が問われる」と指摘する。

 立憲民主党など野党6党派の国対委員長は31日、会談し、佐川氏の再度の証人喚問や衆参両院での予算委員会集中審議を求めることで一致。麻生氏の辞任を迫る構えだ。立憲の辻元清美国対委員長は、佐川氏が3月の証人喚問で「刑事訴追の恐れがある」として証言を避けた点をあげて「(不起訴で)刑事訴追の恐れがなくなったわけだから、ご自身の言葉で(国会で)語っていただく」と語った。【小原擁、遠藤修平】

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