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映画

「羊と鋼の森」 静かな終わりなき道 先輩ピアノ調律師役 三浦友和さん

三浦友和さん=竹内紀臣撮影

 若きピアノ調律師の葛藤と成長を描いた映画「羊と鋼の森」(毎日新聞社など製作委員会)が8日、全国公開される。本屋大賞を受賞した宮下奈都さんの同名ベストセラー小説を山崎賢人さん主演で映画化。音と映像、自然の風景が美しいハーモニーを奏で、若者らの人生の決断を祝福する感動作だ。主人公を調律の世界に導く憧れの先輩調律師を演じた三浦友和さんに、本作の魅力や見どころを聞いた。【鈴木隆】

    未知の世界

     三浦さんは、著名なピアニストからも高い評価を受ける調律師の板鳥宗一郎を演じた。

    三浦友和さん=竹内紀臣撮影

     外村直樹(山崎さん)は高校生の時に、体育館で板鳥の調律した音の世界に、生まれ育った「森」を感じ、調律の世界に足を踏み入れる。「原作がすばらしかった。羊と鋼って、最初は何なんだろうと思いましたが、調律という未知の世界を本の形で表現していて興味深かった。脚本も、原作の面白さを損なわず、無駄なセリフもあまりなくてすばらしかった」

     腕のいい調律師の役を見事に演じていたが、三浦さん本人は「映像や演出でうまくごまかしてもらっただけ」と謙遜(けんそん)する。「もちろん調律の練習はしましたが、一流の調律師の方に撮影現場にずっと来ていただいて、1カット撮るごとに指導してもらいました」。手や体の細かい動きまで実際の調律師の助言を受けた。「板鳥はとても静かだが、内に確固たるものを持っている人。そんな人がどんなふうに思い、感じるのか、手探りでした」と明かす。

     「調律師の方は、ピアノを弾いたときの音の波が、僕らにはまったく分からないところまで繊細なまでに聞こえる。耳がすごいんです」。調律師と一流ピアニストのドキュメンタリーも見た。「映画のように、調律のときに針を刺したりするんですが、やっぱりすごい。『神の耳』を持っているっていう感じです。そんな役をやらせてもらって光栄です。未知の世界に触れる楽しさは、役者の醍醐味(だいごみ)でもあります。ピアノの構造が分かっただけでもうれしいです」

    三浦友和さん=竹内紀臣撮影

    共通点

     今回の役を演じ、調律と俳優という仕事の共通点についても感じた。「ここが頂点とか、最終地点とか、完成形がともに見えない。答えがないんです。教えることはできないし、教わったこともない。役者も同じ。経験して、先に進むしかないんですね」。俳優としての仕事を追体験することにもなった。「僕は俳優を目指していなかったのに、この世界に入って映画に出会い、面白いと続けてきた。そういう点では分かる部分がある。ずっと迷って、落ち込んで、でもやっていこうという点に共感したのかもしれません。外村に昔の自分を見ている感覚でしょうね」

    三浦友和さん=竹内紀臣撮影

     人気の若手俳優との協演も、見どころの一つだ。「自分の20代のころと比べると、皆さんすごい。山崎君も(高校生の姉妹役を演じた)上白石萌音さん、萌歌さん姉妹も何であんなに(芝居が)できちゃうんだろう」と現場で驚いていたという。「僕らの仕事って、いつも同じ土俵に立っている。若い子に勝てないことだってたくさんあります。嫌な言い方だけど、ある意味みんなライバルっていうか、年齢が若いだけです。望むものに近づこうという思いは昔から変わりません」

     ただ、60歳を過ぎたころから自分の俳優人生を考えていくと「自分が納得できる作品、面白いものに出演したいという思いが強くなりました」と話す。本作もその一本になったという。

    込めた厳しさ

     最後に、俳優として最も力を注いだ点を話してくれた。映画の中で、板鳥は外村に調律のときに使うハンマーを2回渡す。1回目は外村が悩み迷っているときに「がんばってくれよと渡します」。2回目はそれを乗り越えたときに渡す。

     「がんばってくれよを超えて、『容赦しないぞ』『なめんなよ』って感じで渡します。そこに、厳しい部分が1回出ればいいと思いました。それまでの板鳥は、つかみどころのないフワッとした人なんですが、あの場面はきちんと厳しさを表現しました」。何気ない動作に込められた先輩の思い。「将来性があると思ったんでしょうね、板鳥は」

    三浦友和さん=竹内紀臣撮影

     語り口は終始ソフトだが、穏やかな中にも力強さと役者魂が垣間見える三浦さん。映画の中で三浦さんが口にする、小説家・原民喜の随筆の一節や「こつこつ、こつこつです」といった言葉の数々も、外村だけでなく、観客の心にも響き渡るに違いない。


    ピアノの音に「森」を感じ、足を踏み入れる外村(山崎賢人)ⓒ2018「羊と鋼の森」製作委員会

    あらすじ

     主人公の外村直樹には、高校卒業後の夢がなかった。そんな中、体育館でピアノ調律師の板鳥宗一郎に出会い、耳にした一音に魅せられ、ピアノの調律という「森」に足を踏み入れることになる。深く果てしない「森」の世界--。「調律って、どうしたらうまくできるようになるんですか」。森を迷い、悩みながらも、先輩調律師・柳伸二やピアノを習う高校生姉妹など多くの人に支えられ、一人の青年が成長していく姿を描く。なお、映画のエンディングテーマは、映画音楽などを多数手がける久石譲さんが作曲し、ピアニストの辻井伸行さんが演奏している。


    8日公開

    原作:宮下奈都

    監督:橋本光二郎

    脚本:金子ありさ

    音楽:世武裕子

    撮影:山田康介

    照明:加藤桂史

    美術:矢内京子

    録音:豊田真一

    出演:山崎賢人、鈴木亮平、上白石萌音、上白石萌歌、堀内敬子、仲里依紗、城田優、森永悠希、佐野勇斗、光石研、吉行和子、三浦友和ほか

    上映時間:2時間14分

    深く果てしない「森」の世界で外村は成長していくⓒ2018「羊と鋼の森」製作委員会

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