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セカンドステージ

認知症とかかわる 介護予防に「サロン」づくり

認知症や介護予防のため、「こみか元気くらぶ」で童謡に合わせて体操する参加者=千葉県松戸市西馬橋相川町で

 <くらしナビ ライフスタイル Second Stage>

     認知症や介護の予防にコミュニケーションが重要なことがわかってきた。コミュニケーションをうまく取ると、認知症の症状がおだやかになることも明らかになっている。今月は認知症対策に重要なコミュニケーションについて掘り下げる。

     「むーすーんで、ひーらーいーて」。地域の高齢者11人が童謡に合わせ体操する。千葉県松戸市の「こみか元気くらぶ」。週に1度、近所の人がコミュニケーションを深める場だ。どんな体操をするか、歌は何を歌うかは参加者の発案で決める。お茶の時間は参加者自ら飲み物や茶菓子を用意する。春にはお花見をしたり、夏にはカキ氷を作ったり。参加者の女性(71)は、フィットネスクラブに通っていたが、腰椎(ようつい)の圧迫骨折で運動が難しくなった。ここなら、地域の人と触れ合い、適度に体も動かせる。「腰の調子も良くなってきた。社会に出る原動力になっている」と話す。

     ●市が助成金も

     主催するのは「子どもの未来を考える会」(佐藤良治理事長)。元々、子どもの居場所を作るために始めたが、井口和子副理事長の発案で、高齢者向けにも居場所を提供する活動として3年前から開いている。月1回の子どもの集いには「元気くらぶ」の高齢者も参加する。おにぎりの作り方を子どもたちに教えながら、一緒に楽しむ。「子どもも高齢者も元気になってほしい」と佐藤理事長は話す。

     松戸市は「元気くらぶ」に昨年度までの3年間、年5~10万円を助成した。介護予防を目的に、「元気くらぶ」のような地域の高齢者が集まる「通いの場」を住民主体で作る「元気応援くらぶ事業」だ。市内で41カ所あり、今後も公募で増やす。

     「通いの場」作りは、介護保険制度の介護予防事業にも位置付けられている。公の制度に入ったのは、通いの場のコミュニケーションが高齢者の状態を良くするとの研究報告が続いているからだ。

     「日本老年学的評価研究(JAGES)プロジェクト」(代表・近藤克則千葉大教授)という研究者グループが進める調査もその一つ。千葉大、東大、東北大、浜松医大などの研究者が、横浜市や長野県松本市など全国の約40市町村と協力し、約30万人の高齢者を対象に調査している。このプロジェクトによると、愛知県武豊町で2000人余りの高齢者を2007年から13年末まで約7年追跡し、「サロン」と呼ばれる通いの場に参加してきた人の「認知機能が低下するリスク」は、参加していない人に比べ7割程度と低いことがわかった。また全国39市町村の約2万人を分析したところ、「虚弱者」の占める割合は、サロン参加群に比べサロン不参加群の方が高いことがわかった。特に85歳以上では大きな差がある。さらに、サロンに参加している人は要介護認定率が低かった。

     この他にも、地域のグループ活動に参加したり、友人と交流したりといった社会とのつながりのある人は認知症発症リスクが低いことが、13年までの10年間、約1万4000人を追跡調査して判明している。

     ●プロボノに教わる

     これまでの研究は中小都市が中心だったため、人口49万人の松戸市と千葉大が提携し、昨年から都市型介護予防の共同研究「松戸プロジェクト」に取り組んでいる。都会には仕事で技術やノウハウを蓄積した人や社会的貢献に関心のある企業が多い。技術や経験を生かす「プロボノ」と呼ばれるボランティアを活用するのが特徴だ。

     戸建て住宅が集まる松戸市の「稔(みのり)台(だい)」にある通いの場「キラキラいこいの場」。町内の高齢者が、口の機能を保つ早口言葉やクイズ、麻雀を楽しむ。参加者の大江春子さん(85)は昨年、肝臓を悪くして1カ月入院したが、「いこいの場」やラジオ体操に通って「体調も良くなった」と話す。空き家だった民家を、地元町内会が無償で借り受け「いこいの場」を運営している。家主の高齢の男性が脱水症状で動けなくなっていたのを町内の人が助けた縁で、家賃、水道代、光熱費も家主持ちだ。

     借り受ける手続きをプロボノ4人が支援した。その一人、黒田隆之さん(75)は、会員が約2500人いる大規模NPOで副理事長を務めてきた。運営上の問題点に精通し、貸主との覚書の締結や保険加入手続きなどを手伝った。「いこいの場」運営者の上野悠子さん(77)は「通いの場がほしいという声が町内で強かったが、場を設けるやり方がわからなかった。プロボノが教えてくれた」と感謝する。昨年度は市内で19人のプロボノが5団体を支援し、通いの場も18カ所増えた。

     ただし、課題も大きい。松戸市在住の全高齢者が歩いていける距離に通いの場を作るには、市内に500カ所は必要だが、市が把握していない非公式なものを含め、推定250しかない。小さな自治体だと人のつながりが強く、通いの場を設けやすいが、近所付き合いの薄い都会では動きは鈍い。

     ●「やりがい」がカギ

     「こみか元気くらぶ」の佐藤理事長は、通いの場は「金、場所、人がないとできない」と指摘する。元々、佐藤理事長の経営していた建設会社の事務所を集まる場に使い、改修費や家賃、水道代、光熱費は無償にしている。「キラキラいこいの場」も家賃、水道代、光熱費は無償にし、特別な例だという。ボランティアを常時確保するのも難しい上、ボランティアがやりがいを感じるような好都合のケースが用意されているとは限らない。

     「キラキラいこいの場」を支援した黒田さんは「お金でない“やりがい”という報酬が十分でない。やりがいのある関わり方を見つけていかないと持続できない」と話す。【斎藤義彦】

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