特集

今週の本棚

「面白い!読ませる!」と好評の読書欄。魅力ある評者が次々と登場し、独自に選んだ本をたっぷりの分量で紹介。

特集一覧

今週の本棚・本と人

『外の世界』 著者、ホルヘ・フランコさん

  • ブックマーク
  • メール
  • 印刷

 (田村さと子訳、作品社・3024円)

異なる時間軸を織り交ぜて

 コロンビア第二の都市、故郷メデジンを小説の舞台に置いた。少年時代に身近で発生した実際の誘拐事件がモチーフになっている。1971年8月、作家のよく知る人物が事件の被害に遭った。

 「それまでのメデジンは誘拐や殺人がない平穏な町だったのに、それがパチンと壊れてしまったような衝撃を受けました。心にずっと残っていて、この衝撃を小説に書きたいと思いました」。事件をきっかけに、メデジンは麻薬取引や暴力がおびやかす町に変容していったという。時代の流れを振り返り、誘拐は「警報のようだった」と語った。

 主な登場人物は誘拐された大富豪、無事を祈る妻、美しい娘、娘に心を寄せた誘拐犯のリーダーの若者。いくつかのストーリーが断片的に語られ、異なる時間軸を巧みに織り交ぜて物語を展開させる。世間と遮断された人形のような娘の描写、ベルリンでの若き大富豪と妻のロマンスがいい。個性的な登場人物とメデジンの風景を鮮やかに印象づけ、同時にユニークな物語構成が本作の魅力になった。

この記事は有料記事です。

残り498文字(全文954文字)

あわせて読みたい

この記事の特集・連載
すべて見る

注目の特集