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旧優生保護法を問う

強制不妊根拠、73年に否定 厚生省局長、遺伝「学問的に問題」

 旧優生保護法が「不良な子孫の出生を防ぐ」として強制不妊手術の対象にした疾患の遺伝性について、同法を所管した旧厚生省の公衆衛生局長が1973年、「学問的に非常に問題があり、再検討の必要がある」と事実上否定する発言をしていたことが日本医師会(日医)の記録から判明した。強制手術を「公益上必要」とした条文についても「問題がある」と断じていた。国は、96年に法改定する20年以上前から法律の根幹に疑問を抱きながら、強制手術を容認し続けた事実が明らかになった。(社会面に「科学の名の下に」)

     遺伝性疾患を理由にした強制手術は、国の統計によると全体の約9割に当たる1万4566人。強制不妊の問題に詳しい専門家は局長発言に驚きを隠さず、「徹底的な検証」を求めた。

     発言したのは、加倉井駿一公衆衛生局長(故人)。73年9月、日医主催の優生保護法指導者講習会に講師として登壇した。講習会は旧法の「指定医」となる産婦人科医らを対象にした研修の一環で、講義内容は74年7月発行の日医機関誌に全文が掲載されている。

     それによると、局長は「極めて常識的な問題を申し上げる」と前置きした上で、優生保護法の問題点に言及した。法文末尾の「別表」にある強制手術の対象とした遺伝性疾患のうち、実際の手術理由のほとんどを占めていた「精神病」「精神薄弱」(いずれも法文上の病名)などについて、「遺伝的なものか否か医学的な統一的見解が確立していない」と明言した。その上で「遺伝性かどうかの認定は非常に困難」と述べた。

     遺伝性を理由にした強制手術は73年、前年の184人から78人と初めて2桁台に激減。手術は89年まで続いたが、発言から16年間の被害者数は405人だった。医師による手術申請が減ったためとみられる。

     市野川容孝・東京大大学院総合文化研究科教授(医療社会学)は「国が法律の根拠を疑いながら手術を容認していたとすれば言語道断」と驚く。松原洋子・立命館大大学院教授(生命倫理学)も「局長発言後、省内でこの問題意識がどう扱われたのか、徹底した検証が必要だ」と語った。【上東麻子】


     ■ことば

    旧優生保護法の別表

     強制不妊手術の対象とした遺伝性疾患の表。躁鬱(そううつ)病やてんかんなどの「遺伝性精神病」「遺伝性精神薄弱」の他、顕著な犯罪傾向などの「顕著な遺伝性精神病質」、全色盲、血友病などを含む「顕著な遺伝性身体疾患」「強度な遺伝性奇形」の5分類30種を規定し、手術費を国が負担。医師に対し、患者の罹患(りかん)を確認し「公益上必要」と認めた場合、手術の申請を義務づけていた。

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