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絵本作家・児童文化研究家 加古里子さん=5月2日死去・92歳

=神奈川県藤沢市で2016年3月

「子どもさんに教わる」 加古里子(かこ・さとし)さん=慢性腎不全のため、5月2日死去・92歳

 亡くなったのは大型連休の真っ最中だったが、公表されたのは連休明け。訃報を耳にしたとき、誰に対しても丁寧でこまやかだった加古さんらしい気遣いだと思った。

     「絵本づくりのすべては子どもさんに教わった」「子どもさんの反応ほど厳しく正しいものはない」。「子ども」には必ず「さん」づけをした。青年時代にボランティアで子どもと接したころの謙虚さを、いつまでも忘れなかった。

     平和を希求し幼子への温かなまなざしを持ち続けた原点は、軍国少年の価値観が一変した終戦だった。正しい道を選ぶ判断力を持てる次世代を育むことこそが「死に残った者の務め」と自らに課した。

     2011年から4年間、毎日小学生新聞で月1回昔遊びを紹介した。高齢のうえ左目がほとんど見えず腰痛などの持病もあったが、原稿は決して遅れなかった。「1年分まとめて書いている」と聞いた時には驚いた。原稿に添えるメモは裏紙で、使い古された袋を貼り合わせた梱包(こんぽう)で送られてきた。バーチャルな世界に浸り、物があふれる今を生きる子どもたちに、自然の草木や輪ゴム、割りばしを集めて遊ぶ工夫や楽しさを伝えた。

     数年前に自宅を訪ねた際、学生時代に作ったという大型紙芝居を演じてくれた。ナメクジが大きな家を得ていく物語は、英字新聞などを使ったコラージュが斬新だった。当時のいたずらっ子の様子を面白おかしく話すさまは、青年に戻ったようだった。卒寿を迎えた感謝の集いでは「だるまちゃんシリーズは数百の物語案がある」と語っていた。今年1月に出版したシリーズ3冊は岩手・宮城、福島、沖縄を舞台に選んだ。最後まで子どもたちの未来を思い続けていた。【木村葉子】

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