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社説

森友文書改ざんの調査結果 居座った財務相の不実さ

 公文書の改ざんや廃棄、たび重なる虚偽答弁で1年以上にわたって国会を欺き続けた前代未聞の不祥事だ。財務省職員の処分だけでは済まない。当然ながら麻生太郎副総理兼財務相の引責辞任が不可欠である。

 森友学園への国有地売却問題で財務省が内部調査の報告書を発表し、佐川宣寿前理財局長が事実上、決裁文書の改ざんと交渉記録の廃棄を指示していたと認定した。

 では、なぜ指示するに至ったのか。報告書では国会審議で質問される材料を減らすのが主目的だったとしている。その核心は、安倍晋三首相の妻昭恵氏の関与を隠そうとしたことだと考えられる。

背信を生んだ組織防衛

 発端となったのは「私や妻が関係していたということになれば、間違いなく首相も国会議員も辞める」という昨年2月17日の首相答弁だ。

 報告書によると、この答弁を受けて、理財局の総務課長が近畿財務局などに昭恵氏の名前が入った文書があるかどうかの確認を求めた。その後、政治家関係者からの照会状況について報告を受けた佐川氏が改ざんや廃棄を指示した。

 昭恵氏の名前は決裁文書の改ざん箇所にも交渉記録にも出てくる。多くは学園側が言及したものだが、設立予定だった小学校の名誉校長に一時就くなど、昭恵氏自身が学園に肩入れしていたのは事実だ。

 売却価格の約8億円の値引きに直接関与した記録はなかったが、昭恵氏付の政府職員が貸し付け契約の優遇措置について照会した交渉記録が廃棄されていた。

 国民の共有財産である公文書の改ざんや廃棄は民主主義の根幹を揺るがすものだ。佐川氏ら財務省職員の責任は重い。

 安倍政権の5年半に起きた財務省の地盤沈下は著しい。金融緩和と財政出動による景気刺激が重視される中、財政再建を主張する財務省は首相官邸からうとまれてきた。

 首相官邸からの更なる批判を恐れ、過剰な組織防衛の意識が働いたとしても不思議ではない。

 改ざんや廃棄は麻生氏の財務相在任中に起きたことだ。

 「交渉記録は全て廃棄した」という佐川氏の不自然な答弁をとがめるどころか、国税庁長官に昇格させ、「適材適所」だと強調したのは麻生氏だ。「いわゆる改ざんといった悪質なものではない」と述べたり、前財務次官のセクハラ問題でも「セクハラ罪という罪はない」と繰り返したりと、部下を擁護する発言で財務省批判の火に油を注いでもいる。

 麻生氏は「進退については考えていない」といったが、財務省を監督する立場として今回の不祥事の責任を取らない方がおかしい。

政治道徳の堕落を招く

 古くから「政治は最高の道徳である」といわれてきた。実態を見ればそれほど清廉潔白な政治家ばかりでないのだろうが、時の政権が国民に範を示さなければ国の統治をゆがめてしまう。政治家はその建前を忘れてはならないという警句だ。

 これほど重大な不祥事を引き起こしておいて、政治家がだれも責任を取らないということでは、政治道徳の堕落につながる。

 麻生氏が居座りを決め込むことは国民に対して不誠実であり、政治不信に拍車をかけるだけだ。

 財務省のエリート官僚が公文書の改ざんに手を染めた背景には、省庁の幹部人事を官邸主導で決める内閣人事局を通して政治が官僚を支配している政権構造がある。

 憲法66条は「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ」と定めている。首相は「行政府の長として責任を痛感している」というのであれば、官僚のみに責任を押しつけるのではなく、内閣の政治責任を明確にすべきだ。

 首相は「ウミを出し切る」といいながら、麻生氏を辞めさせようとしない。内閣支持率は下げ止まりの傾向にあり、「多弱」の野党は政権追及の迫力に欠ける。麻生氏を留任させても政権の致命傷にならないと高をくくっているのだろう。

 加えて9月に自民党総裁選を控え、3選を狙うのに麻生氏の協力が必要だという事情もあるようだ。不祥事の処理より首相の政治的な打算を優先させたことになる。

 森友問題の全容解明にはまだ至っていない。このままでは民主主義を毀損(きそん)した危険な状態が続く。政権としての政治責任にけじめをつけることを求める。

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