メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

ロシアW杯

「西野監督は規律の中の自由度高い」 橋本英郎選手

インタビューに答える橋本選手=東京都稲城市で2018年5月、小座野容斉撮影

 6月14日に開幕するサッカー・ワールドカップ(W杯)ロシア大会で、日本代表は6大会連続6回目の舞台に挑む。本大会に向けた準備期間に結果が振るわない中、突然の監督交代に揺れた日本。「代表は大丈夫か」「W杯はどうなるのか」--。元日本代表で、ガンバ大阪時代に“西野サッカー”の躍進を支えた橋本英郎選手(東京ヴ)に、監督への期待や日本代表について語ってもらった。【寺田翼】

--ハリルホジッチ氏解任、西野朗監督就任。この交代劇をどう捉えていますか。

 率直に、僕はハリルさんでW杯を迎えてほしかったなと思う。今まで(同じ監督のまま)W杯に出たチームの方が本大会でうまくいっていることが多いし、昨年8月のオーストラリア戦では戦い方を変えて勝利し、W杯出場を決めた。面白いサッカーだとは思わなかったが、勝負に徹した「W杯仕様」になったんじゃないかなと。日本人の一つのポテンシャルを生かしたサッカーで、そういう意味ではちょっとW杯で見てみたかった。

長所を引き出してくれる形に

西野体制下のチームで多くのタイトル獲得に寄与した橋本選手。写真は2009年の天皇杯優勝時=国立競技場で、佐々木順一撮影

--西野監督と橋本さんは、ガ大阪で10年、神戸で1年と長期間にわたって「監督と選手」という関係でしたが。

 西野さんは、基本的に多くを語るタイプではないです。大きな道筋を立てて、その中で戦わせる感じ。導いてくれる流れを(選手自身で)感じ取らないといけない部分はあるかもしれない。ただ、とてもしっかりとした道筋を立ててくれていた。

 ガンバ大阪は、2002年に西野さんが監督になるまでカウンター寄りのサッカーだった。上位のチームではなかったので、リアクションサッカーが中心だったが、アクションサッカーに転換してもらえた。僕や同年代のメンバーはリアクションサッカーをやってきていなかったので、自分たちの長所を引き出してくれる形になった。僕らのやる気を上げてくれた部分はすごくあったと思う。

 自由度は高いが、はみ出してはいけない大枠はある。ハリルさんの場合は、その幅が線のように細かった。はみ出た選手を排除して、線に乗る選手を選んでいたとも思える。西野さんは、その枠の幅がもう少し広い。規律の中の自由度は高いかもしれないですね。

インタビューに答える橋本選手=東京都稲城市で2018年5月、小座野容斉撮影

コロンビア戦、引き分け以上を

--西野監督に期待することは?

 選手たちが持っている力をストレートに出せるようにしてあげること。(昨年8月のW杯アジア最終予選)オーストラリア戦は受け身なように見えて、チャレンジもしていた。その後は、ブラジルなど強豪相手との試合が増えて、自分たちのサッカーに疑問を抱えた状態でプレーしているような感じに見えた。思い切ったプレーが減っていたかなと思う。チャレンジするプレーは僕らに希望を感じさせてくれる。そういう部分を最優先に考えているんじゃないかなという気はします。

--W杯1次リーグのポイントは?

 初戦のコロンビア戦を、勝てないまでも引き分けで終わることができたら、選手の前向き度合いは極端に上がるかなと思います。2戦目のセネガルは、レベルは高いがルーズな部分もある。アフリカ特有の、身体能力ですべてをカバーしようとする部分があるので、1対1では負けるかもしれないけれど、組織力など日本の長所を発揮できれば勝てる可能性はある。ポーランドは、そういう穴があまりないイメージ。(3戦目までに)1勝1分けの流れで進めたら、あとは引き分けでも(決勝トーナメントに)行けるとなるかもしれない。最後は、その時の雰囲気で決まるのではないかなと思います。

「選択肢の多さ」でブラジル 安定感でドイツ

--今大会の優勝予想は?

 今の感じであれば(前回大会で優勝した)ドイツ、ブラジルかな。今回は、ブラジルの方が優勝する可能性が高いような気がする。FWネイマール(パリ・サンジェルマン)はケガ明け(今年2月のリーグ戦で右足を負傷し、3月に手術)になるが、他の選手たちは1シーズン戦い終わってからの合流で、少し疲れている時期。エース級の選手が(体を休められた)良い状態でW杯を迎えられるのは、かなり有利かなと。ブラジルはトリッキーで違う選択肢を試合の中でもどんどん出していく。いろいろな国でプレーする選手が多いだけあって、(プレーの)選択肢の多さはすごい。ドイツは安定感があって、1次リーグをどう勝ち上がっていくかなど優勝までの絵が描けている。手堅く最低ラインを乗り越えられるようにしていく感じ。

--海外の注目選手は?

 リバプールのFWサラー(エジプト)ですね。 英国のプレミアリーグという最高峰のリーグで得点記録を更新する選手なので。自国開催のロシア(1次リーグで同じA組)に「地の利」はあるが、エジプトが突破できないグループでもない。すごく気になる。

 (自分と)同じポジションであれば、レアル・マドリードのMFトニ・クロース(ドイツ)。うまいし、プレーの選択肢も豊富。(クラブではそこまで目立たないが)代表では目立つ感じがする。役割が違うからかもしれないが、そういう意味ではキーになる選手じゃないかなと。

日本人は「外国人恐怖症」みたいな部分がある

--日本の選手が海外のチームをリスペクトし過ぎる感覚はありますか。

インタビューに答える橋本選手=東京都稲城市で2018年5月、小座野容斉撮影

 ありますね。「リスペクト」ってすごく良い表現ですが、リスペクトし過ぎるというのはただびびっているだけ。逆に「リスペクトしない」というのは、相手をなめている状態。普段から海外で試合をしていると(海外の選手が)びびる対象ではなくなる。でも、なめる対象でもない。それがリスペクトしている状態だと思う。

 海外でプレーしている選手は、相手と自分とのレベルの差、距離感を詰められているが、Jリーグの選手はつかめていない。日本人って「外国人恐怖症」みたいな部分がありますよね。普通のコミュニケーションと一緒だと思う。外国人が何をしてくるか分からないし、慣れていない。ただそれだけ。酒井宏樹選手は、(仏リーグの強豪)マルセイユで戦い続けているし、(プレミアリーグのサウサンプトンで活躍する)吉田麻也選手もそう。彼らがJリーグでプレーしている頃に、遠藤(保仁選手)が簡単に抜いて点を取っているわけで。そんなにすごい差じゃなかった、ということもある。

--橋本さん自身は、日本代表と所属クラブで「違い」はありましたか?

AFCアジア杯・準々決勝のオーストラリア戦を前にPK練習を行う橋本選手(右)=ベトナム・ハノイで2007年7月、佐々木順一撮影

 (代表は)すごく重たいものを背負って戦う場所だという感覚だった。小さい頃から日本代表の試合をテレビで見ていたし、地元には在日韓国人の子も多く、中学や高校の時から(国を意識した)試合をする機会があった。向こうはすごく「気持ち」があるんですよね。日韓戦への注目度も高く、「国を背負って」という感覚が強い。それに負けないように日本もみんな背負っていると聞かされてきた。そういう環境で育ってきたので。

 代表は、勝手にピリピリとしたムードになる。「下手なプレーができない」という感覚が強かった。シュートを打って(ゴールの)枠外であれば、代表に選ばれていない選手と一緒と思われてしまう。そのプレッシャーを感じながら僕はやっていた。そういう意味では、向上する機会、プレーヤーとしてレベルが上がる良い場所だと思いますね。

「プレーする楽しみ」が僕の中では大事

--橋本さんはプロ21年目。現役を続ける理由は?

 サッカーが好きだから。将来的には指導者になろうと思っている。ただ、指導者はどのタイミングでもできるが、選手は「やれる時」が限られる。「選手をやめてもう一回やりたいと思っても、できるものではない」とよく言われる。やっぱりサッカーをするのが好きなので、そこがこだわりといえばこだわり。「プレーする楽しみ」が僕の中では大事です。

--ベテランになると見え方、プレービジョンが変わってくると言われますが。

 僕はあまり変わっていない。身体能力が高いわけではなく、技術もずば抜けて高いわけでもないので、その部分はずっと考えきた。同じポジションをしている選手が多いと思うが、僕は一通りのポジションを経験している。それぞれの景色があるんですよね。その経験があるのであまり感じないかな。


インタビューに答える橋本選手=東京都稲城市で2018年5月、小座野容斉撮影

キープレーヤーは中島 / ベテラン枠は「遠藤一択」

 橋本選手が思う今の日本代表に必要な選手とは--。5月18日にW杯に向けた壮行試合であるガーナ戦(30日)の招集メンバー27人が発表され、31日に本大会に臨む23人に絞られた。このインタビューは、ガーナ戦メンバーの発表があった18日より前に行われた。代表選手がまだ決まっていない中で、橋本選手はどう語っていたのか。

--日本代表のキープレーヤーになり得るのは?

 中島翔哉君(ポルティモネンセ)は勢いに乗っている。チャレンジする気持ちが出ているので、チームを前向きにする部分も期待できる。乗っている選手が(W杯で)ブレークできるかっていうのが大事なんじゃないかなと。

 30歳前後の選手の役割として、そういう選手をどれだけ良い形でスター選手にしてあげられるか、というところも重要。スター選手がいて脇役がいて、それを支える人がいて。そういう役割分担がきれいに出来上がると、予選突破はしやすくなると思う。逆に、ブレークする選手がいないと1次リーグ突破は正直難しい。

--チームが一体化していく中で、ベテラン枠という存在は必要ですか?

 必要だと思います。僕は遠藤保仁を推している。遠藤は、西野さんとは僕と同じ期間やっているが、彼の方が主力で、僕は途中で出ていない時もあった。(遠藤)一択です。


 はしもと・ひでお 1979年、大阪府生まれ。ガンバ大阪の下部組織で育ち1998年にガンバ大阪でプロに。神戸、セレッソ大阪などを経て17年に東京ヴェルディへ。2007~10年に日本代表に選出。173センチ、68キロ。MF。

毎日新聞のアカウント
毎日新聞社は、東京2020大会のオフィシャルパートナーです

[PR]